平成29年9月8日、毎日新聞
孤立するひとり親家庭を支援 自治体が手厚く「集中相談会」
孤立に苦しむひとり親家庭に支援情報を確実に届けようと、児童扶養手当の現況届を役所に提出する時期にあたる8月に合わせ、自治体の間に手厚い相談体制を整備する動きが出てきた。自ら制度を知り、申し込まなければ利用できない「申請主義」を超え、積極的に手をさしのべる取り組みが広がるか、注目される。
先進的な子育て支援策に取り組んできた兵庫県明石市では昨年と今年、多くの職場が休みになるお盆期間を含む7日間に「ひとり親家庭総合相談会」を実施した。市役所内に▽生活▽子育て▽就労▽健康▽離婚後の面会交流や養育費のガイダンス▽法律--の相談ブースを設置。市の家庭児童相談員や保健師、弁護士資格を持つ職員のほか、民間支援団体やハローワーク職員らが相談員を務めた。
「困っている親子を見落とさない」ための工夫は随所にある。まずは多くの親に相談会場まで足を運んでもらえるよう、現況届の提出を終えた人を職員が別棟の会場まで案内。会場では初めに、事前送付していた生活上の悩みを聞くアンケートを出してもらい、その内容に従って各相談ブースを紹介する。アンケートを提出した人には、プレゼント(昨年は図書カード、今年は企業の提供によるシャンプーなどの日用品)も用意した。
会場で目を引くのは、「まったりスペース」と名付けられた中央の大きなテーブルと椅子。親が離婚した子を主人公にした絵本など、児童向けの本や、支援情報の冊子が並べられ、相談を受ける順番待ちの間に読める。今年、会場を訪れていた中学3年の息子がいる派遣社員の母親(40)は「教育費はためてきたが、自分の老後が心配。セミナーの情報が聞けてよかった」と笑顔を見せた。今年は、児童扶養手当の受給資格を持つ約2700人のうち、3割弱にあたる約730人が相談会場に訪れた。
東京都武蔵野市や千葉県松戸市など相談ブースを設ける自治体は増えている。厚生労働省は昨年度から、こうした集中相談に取り組む自治体に経費の半額を約150万円まで補助する事業を始めた。明石市の相談会のコーディネートや、相談対応を手がけたNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都千代田区)の赤石千衣子理事長は「普段は相談に来ることの少ない父子家庭の父親の悩みもじっくり聞けた」と効果を強調。「孤立を防ぐには『役所が頼ってもいい場所』と知ってもらうことが大切。予算もさほどかからないので、多くの自治体に広がってほしい」と期待する。【反橋希美】
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