両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

子どもの手続代理人

平成27年8月24日 子どもの手続代理人に関する通知

 家事事件手続法23条1項又は2項により裁判長が選任し、又は選任を命じる手続代理人(以下「子どもの手続代理人」という。)に関し、 日本弁護士連合会から各地の弁護士会に対し、書簡(平成27年8月21日付け「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」の送付及び周知について(依頼) 」 )を送付した旨の情報提供を最高裁判所が受け、同書簡に添付されている「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」が、最高裁判所との協議を踏まえ、その利用が想定される場面が明確にされているとして、適宜、裁判官及び関係職員に周知するように、平成27年8月24日に最高裁判所事務総局家庭局第二課長から各家庭裁判所事務局長に通知されました。

※詳細はこちらのPDFを参照ください。

子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型

1 子どもの手続代理人の役割
① 子どものための主張及び立証活動
 (補足説明)
 子どもは、事件の申立て、当事者参加、利害関係参加等を通じて手続の主体となり、自己の権利の行使として手続行為を行う。子どもの手続代理人は、こうした子どもの権利及び正当な利益の実現のために、主張及び立証活動を行う。
 その際、子どもの手続代理人は、依頼者である子どもの意思を尊重して職務を行い(弁護士職務基本規程22条1項)、子どもがその意思を十分に表明できないときは、適切な方法を講じてその意思の確認に努める(同2項)。また、主張・立証のための頻繁な打合せを通して、代理人は子どもの意思を継続的に把握する特徴がある。このことは、子どもにとっては、手続主体として意思表明を行う手段の多様性が確保されるという意義がある。
 家庭裁判所にとっても、子どもの意思の多面的な発露(家裁調査官が子どもの言動に影響を及ぼしている要因を分析して子どもの意思を的確に把握するにあたって、子どもが自己の代理人との打合せにおいて示す言動等も参考となりうる)を踏まえて、子どもの意思の把握の精度を向上させることが可能となるという意義があるものと思われる。
② 情報提供や相談に乗ることを通じて、子どもの手続に関する意思形成を援助すること
 (補足説明)
 上記①の活動を行うにあたっては、(ア)子どもに対して、手続の進行状況に関する情報、審判・調停の結論の見通し、結論それ自体、その他子どもが手続行為を行う際の判断の基礎となる情報(たとえば、今後の生活状況や通学に関する情報など)を分かりやすい言葉で提供したり、(イ)手続に関し、子どもが意思を定めかねているような場合や、子どもが一定の意思を示しているが、なお働きかけの余地があるような場合等において、子ども相談に乗ったりすることにより、子どもの手続に関する意思形成を援助する必要があることも多い。
 なお、子どもの示した手続に関する意思がその客観的利益に反すると認められるような事案や子どもの手続に関する意思に反した結論が見込まれる事案等において選任された手続代理人の役割について付言すると、子どもの手続代理人は、依頼者である子どもの意思を尊重して職務を行うこととされているから(弁護士職務基本規程22条1項)、子どもの意思を変えさせる役割を担うものではない。しかし、子どもに対し、その客観的利益や結論の見通しについて情報提供したり、相談に乗ることを通じて一定の働きかけをしたりすることは、子どもがその後の手続、ひいては結論に対して納得感を持つことができるという意味で有益であるとともに、結論の実効性を高め、紛争の再発を防止する効果もあるものと思われる。
③ 子どもの利益に適う合意による解決の促進
 (補足説明)
 子どもが父母問の紛争に利害関係参加する場合には、子どもの立場から、父母に対して、離別後の子どものより良い養育のあり方について積極的な提案を行い、子どもの利益に適う合意による解決を父母に働きかける。また、上記①の活動に関連する子どもを巡る突発的な事態が手続係属中に生じたような場合などには、父母に対し、子どもの利益に適う暫定的な合意を促すなど、適宜の対応を行う(たとえば、子の監護者指定の事案で、子どもが同居親宅から家出し、別居親宅に行ってしまった等の例が考えられる)。
 一方、家裁調査官も、調査面接における働き掛けや、(調査報告書の閲覧、調停期日におけるフィードパックによる)調査結果の父母との共有等を通じて、父母が子どもの利益の視点に立って解決策を考えることを促す活動を行っている。そのため、子どもの手続代理人は、家裁調査官とそれぞれ本来の役割を果たしつつ協働することどなる。
④ 不適切な養育等に関する対応
 (補足説明)
 事件を申し立て、又は手続に参加した子どもについて、同居親による養育に問題がある等、子どもの日常生活に支障があるときは、必要に応じて児童相談所その他の関係機関と連携することがある。
 一方、家裁調査官も社会福祉機関との連絡その他の措置をとることができるため(家事事件手続法(以下「家事法」という。) 59条3項)、子どもの手続代理人は、家裁調査官とそれぞれ本来の役割を果たしつつ協働することとなる。
 こうした活動は、子どもの最善の利益を確保するためのものであるが、子どもの手続代理人にとっては上記①の活動を行うための前提条件を確保するという意義がある。また、子どもの手続代理人がそのような活動を行う場合には、家庭裁判所にとっても、子どもの意思の把握その他の手続上の関わりを行うための前提条件を確保するという意義があるものと思われる。

2 子どもの手続代理人制度の利用が有用な事案の類型
(補足説明)
 以下の①から⑥までの類型化は、子どもの手続代理人選任を見越した職権参加の相当性判断(家事法112条3項)、又は事件を申し立て、若しくは参加が認められた子どもに手続代理人を選任するかどうかの必要性判断(家事法23条1項)の際に参考になるものと思われる。
 なお、家事法の立法趣旨の一つで、ある子どもの手続保障という観点からは、子ども本人がした任意参加許可の申立てが相当でないとして許可されないということは、家事法42条5項において想定している場面を除けば少ないものと思われる。
 
①事件を申し立て、又は手続に参加した子どもが、自ら手続行為をすることが実質的に困難であり、その手続追行上の利益を実効的なものとする必要がある事案

②子どもの言動が対応者や場面によって異なると思われる事案
 (補足説明)
 1①に記載したように、子どもの言動は対応者や場面によって異なることがありうること、主張・立証のための頻繁な打合せを通して、代理人は子どもの意思を継続的に把握する特徴があることなどを踏まえると、子どもの手続代理人の活動は、家裁調査官が子どもの意思の把握の精度を向上させるためにも有用であると考えられる。

③家裁調査官による調査の実施ができない事案
 (補足説明)
 たとえば、同居親又は子ども自身が調査を拒否し、あるいは拒否的であるなどの理由により、家裁調査官による調査が行えない場合などが考えられる。

子どもの意思に反した結論が見込まれるなど、子どもに対する踏み込んだ情報提供や相談に乗ることが必要と思われる事案
 (補足説明)
 上記1②参照。

⑤子どもの利益に適う合意による解決を促進するために、子どもの立場からの提案が有益であると思われる事案
 (補足説明)
 上記1③参照。

⑥その他子どもの手続代理人を選任しなければ手続に関連した子どもの利益が十分確保されないおそれがある事案

2015-11-15 (日) 17:35:42
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