両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

自民党要望書

当会は、2021年4月7日、自民党政務調査会『虐待等に関する特命委員会』に「別居時の子どもの連れ去りとその後の引き離し防止に対する要望書」を提出しました。

別居時の子どもの連れ去りとその後の引き離し防止に対する要望書

 一方の親による別居時の子どもの連れ去りは、子どもに対する重大な権利侵害であり、将来にわたっての悪影響が大きく「児童虐待にあたる」と言っても過言ではありません。
○子どもは連れ去りにより、慣れ親しんできた住居や友達、今まで抱いていた家族のイメージ、経済的に安定した生活など、様々なものを突如、理由もなく失う。
○愛着対象の親から突如、理由もなく切り離された子どもは、大きなトラウマとなり、自己肯定感や基本的信頼感の低下、抑うつ傾向、アイデンティティの混乱など、さまざまな悪影響を将来にわたり受ける。
○親権者指定の裁判では「監護の継続性」が優先される傾向から、監護実績を確保するために連れ去りという実力行使で子どもを囲い込み、さらに子どもに別居親を拒絶するように仕向け、親子交流の機会を奪うなど、子どもの権利・福祉を害する状況が生じている。

別居時の子どもの連れ去りとその後の引き離しによる子どもへの悪影響及び親子の断絶を防止するために、下記について要望いたします。

1.児童虐待防止法の「児童虐待」の定義に「子どもを父母から分離させる行為及び接触させない行為」を加え、「児童虐待」としての位置づけを明確にする
 ※以下、「子どもの連れ去り」には一方の親のみを「追い出し」別居させる行為を含む。

(1)国会審議において
平成23年4月19日の衆議院法務委員会において、「不当な子どもの連れ去り児童虐待にあたるのでは」との馳浩議員の質問に対し、厚生労働省石井審議官は、下記の答弁を行っている。
 『児童虐待の定義の第2条4号の中に「児童に対する著しい暴言、または著しく拒絶的な対応」、そして「その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動」、これが児童虐待に該当するということですから、まさにこれに該当するようなひどいケースについては当たりえる。』
 平成31年4月25日参議院法務委員会では、参考人として招致された、元家庭裁判所調査官の伊藤由紀夫氏が、「他方の親への面会交流を激しく拒否したり一切の接触を遮断したりしているといった場合、さらに、子どもを自分だけの支配下に置くように心理的に操作するといった、あえてですが、虐待に準ずるような問題行為」と指摘している。
 また、令和3年3月30日参議院法務委員会において、「片親疎外的行為は虐待ではないか」との真山勇一議員の質問に対し、厚生労働省岸本児童虐待防止等総合対策室長は下記の答弁を行っている。
 『児童虐待防止法に規定されている児童虐待の4類型が規定されています。片親疎外的行為によりまして、個別の判断ですが、子どもに身体的または心理的外傷が生じる場合など、子どもの最善の利益の観点から問題がある場合には、上記の虐待に該当することも考えられると思います。例えば、子どもに別居親を罵倒させる場合など、子どもがトラウマを受けた場合には心理的虐待にあたることも考えられる。』

(2)児童の権利条約 第9条 「親子不分離の原則」
 第1項で「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」、第3項で「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」とし、「親子不分離の原則」を規定。

2.「父母の別居及び離婚後において子どもを父母から分離させる行為及び接触させない行為」を防止するために家事手続の運用を改善する

(1)親権者判断の基準の見直し
 別居時に子どもを連れ去った監護親は、親子交流を拒否しても、裁判所において監護者としての適格性が問題にされたり、監護権を変更されることはない。
 単独親権制度のもと、裁判所は特別な事情が無い限り、子どもの現状の養育環境を継続する「監護の継続性の原則」を親権者判断の基準として運用している。これが別居時において一方の親が他方の親の同意を得ることなく、子どもを連れ去り、その後の「子どもを父母から分離させる行為及び接触させない行為」を誘発している。

(2)親権者決定におけるフレンドリーペアレントルール(友好親原則)の導入
 欧米諸国では、子どもの最善の利益を実現するために、他方の親に面会などをより多く認める『寛容性の原則』が監護者決定において重視されるフレンドリーペアレント(他方の親により多くの頻度で子を会わせる親)の原則が導入されており、親権者決定における重要な原則となっている。

(3)家事手続き中の迅速な親子交流再開と親子を断絶させない運用
 裁判所における家事手続き中の親子交流は、子どもが望んでいても、監護親の承諾が無い限り、合理的な理由もなく、調停の合意や審判の決定が出るまで行えない運用がなされている。監護親の許可を得ず親子交流を行えば、後の審判で不利な材料として扱われる。この運用が、「子どもを父母から分離させる行為及び接触させない行為」を肯定することとなり、その行為や感情をさらに助長している。審理期間も長く、その間に、子どもは、情緒不安定になったり、良好であった親を拒絶するようになったりするなど、子どもの精神や生活に多大な悪影響を及ぼしている。

3. 別居時において、一方の親が他方の親の同意を得ることなく、子どもを連れ去る行為は児童虐待であるだけでなく、不当な親権行使にあたり禁止する

(1)「同意なき子どもの連れ去り」は、不当な親権行使であり子どもの利益に反する
 欧米諸国では、誘拐罪として刑事責任が問われるが、わが国では別居時の連れ去りの刑事責任は問われず、連れ去られた親が連れ戻すと逮捕されることがある。裁判所は、連れ去った側の親に独占的監護権を付与するのが一般的で、国内外で「連れ去った者勝ち」と非難されている。
 不当な親権行使による子どもの連れ去りは、子どもの将来にわたって悪影響を及ぼすだけでなく、連れ去られた親の監護権の侵害行為であり、現行法(未成年者略取誘拐罪)の保護法益にあたると考える。

(2)緊急避難による子どもの連れ出しへの法的保護の対応
 DV、児童虐待による被害防止対策として、緊急避難の手続きを設ける。緊急避難後に、加害者とされた親の冤罪を生まないよう人権侵害に配慮した証拠に基づく公正な捜査により、緊急避難の正当性を検証する手続きを設ける。

(3)子どもの連れ去り禁止の法整備を求める国際社会からの要請
 令和2年7月8日にEU議会・本会議で子どもの連れ去り禁止を日本政府に求める決議案が採択された。EU本会議で議決された主なポイントは、
1)EU国民の親が日本人配偶者から子を拉致される事件が増加
2)日本は児童保護に関する国際ルールを遵守していない
3)日本の法律の下では監護権の共有は不可能
4)親権を持たない親の訪問権が限定的または存在しない
 EU議会から、わが国が批准した国際条約(子どもの権利条約ハーグ条約)を遵守し、法の秩序や人権擁護という価値の共有を求められている。

4.配偶者暴力防止法に基づく措置において事実誤認があった際の迅速な救済制度の検討

(1)子どもの連れ去りに利用されている虚偽DV主張の問題
 「子どもを連れ出した理由はDV」と主張することが横行し、別居親がDVなどしていないことを立証することに長期化してしまい、DVが争点でなくなった時には監護の継続性が完成する。一方的なDV主張が、真偽確認がされず、親子の引き離しを容易に行うことができる手段として利用されている。
 現行の配偶者暴力防止法の手続きは、女性センターがDV相談を受けた場合、事実関係の調査はなく、相談したという事実のみで行政は父親に対し妻子の住所秘匿の措置をとる。一方、DV加害者とされた父親に対しては、DVの告知聴聞手続きなどは一切保障されず、冤罪を生む状況となっている。

(2)子どもの連れ去り防止および冤罪防止のための迅速な救済制度の検討
 わが国における配偶者暴力防止法に基づく措置は、加害者とされる人の手続き保障がなく、事実誤認があった際の簡易迅速な救済制度もないことから、子どもと父母の分離の要因となっており、DV防止法の改正等、対応策について検討が必要。
 DV の判断は、被害を申し立てた者の主観的な意見を行政が安易に受理するのではなく、身体的DVは警察の捜査を義務づけ証拠主義とすることなど冤罪を防止するための制度の導入が必要である。特に精神的DV主張については、双方の主張を丁寧に聴取し、客観的な基準による専門家の真偽確認の手順が重要と考える。

(3)国際社会の対応
 各国ともDV の有無の確認や子どもの処遇に関し裁判所が積極的に関与している。例えば、アメリカ(カリフォルニア州)では、DV事案を専門に扱うDV裁判所による審理の中で離婚や子どもの処遇に関する決定がされる。

5. 両親の別居・離婚を経験した子ども(成人含む)への支援

 法務省が令和3年3月に発表した「未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書」によると、別居親との現在の関係は、全く関わりがないが33.4%、また面会交流について、もっとしたかったが18.6%、多すぎたは5.7 %しかなく、別居親との関係修復が必要としている。また、子どもが希望する支援や制度として、精神・健康のチェック44.3%、相談窓口の設置42.9%、子どもの権利のための法整備37.5%、子の代理人制度26.7%、広報・啓発活動30.9%と高かったとしている。これらのアンケート結果からも、両親の別居・離婚を経験した子ども(成人含む)への支援として、省庁間を横断した総合的な支援対策が必要と考える。
 支援対策の例は下記のとおり。

・離婚という家族の移行期を経験する家族(子ども・両親・祖父母)のための心理教育
プログラムを実施
・親子統合にむけた支援(子どものカウンセリング等)
・第三者公的機関として相談支援センターを設置し、離婚時等の相談体制を強化
・別居時の子どもの連れ去りを防止するための国民への広報・啓発
・子どもアドボケイトの配置

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