両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

ドイツ

ドイツの離婚後の親権・養育制度

出典:「平成26年度法務省委託 各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書」一般財団法人比較法研究センター(2014年)P.1~27
報告書PDF

ドイツの共同親権立法化の流れ

法律規定内容
1896年ドイツ民法典婚姻中も、監護権者は父のみが原則
1949年基本法実務上、婚姻中は父母共同監護権の取扱い
1957年男女同権法民法改正:婚姻中は父母共同監護権
1979年親としての配慮に関する法の新規制のための法律離婚後の共同配慮は、例外なく父母の一方のみに委ねると改正 ※「親権」を親の義務の面を強調するため「親としての配慮」に変更
1982年連邦憲法裁判所違憲判決1979 年法の規定(離婚後の単独監護)は基本法に反し、無効
1997年親子法改正法 離婚後の共同配慮(親権)を立法化

※上記の流れは、「離婚後の父母共同監護について:ドイツ法を手がかりに(1) 国際公共政策研究 第16巻第1号 (2011年)P.249~250」 も併せて参考にした。

1997年親子法改正法の主なポイント

  • 父母は、親としての配慮を自己の責任において、かつ、双方合意のうえ 、子の福祉のため行使しなければならない(1627条1文)。
  • 意見が異なると きは、一致するよう努めなければならない(同条2文)。父母には、必ずしも子に関わる全ての事柄について合意し共同配慮を行うことが求められるわけではない。すなわち、「親としての配慮が共同で帰属している父母が一時的ではなく別居 している場合は、その規律が子にとって重大な意味を有する事項における決定の際には、双方の合意を必要とする 。」 (1687条1項1文)。
  • 「父母の一方は 、他の一方の同意を得て、又は裁判上の決定に基づいて子が通常居住するときは、日常生活に関する事項について単独で決定する権限を有する。」 (1687条1項2文)。
  • 子の福祉のために必要とされる場合には、父母の合意に基づいた申立てとは異なった判断を裁判所が下すことも可能としている。

離婚手続と配慮権の帰属決定の関係

  • 離婚は、仮に夫婦間で合意があったとしても全て裁判によるものとされ(1564条)、区裁判所の特別部の一つである家庭裁判所へ書面で申立てを行わなければならない(家事事件・非訟事件手続法〔FamFG〕133条)(2008年12月17日法、2009年9月1日施行)。
  • 未成年の子に対する配慮権や面会交流・養育費に関しては、夫婦間の諸権利義務と並び、取決めをしたかどうかを、申立書に記載しなければならない(FamFG133条1項2号)。
  • 日本の家庭裁判所調査官にそのまま相当する制度は存在しないが、同様の役割は、少年局や心理鑑定人が担っており、配慮権の帰属決定に際しても重要な役割を果たしている。

共同配慮の支援体制

  • 援助を受ける権利については、社会法典第8(SGBⅧ)17条の規定により保障されている。
  • 父母には、①相談所、②少年局の専門担当部署、③家庭裁判所により、あるいは必要に応じてその三つが連携して、ケースに応じた援助が提供される。
  • 相談所においては、援助の意義や内容を十分に理解してもらい、父母に親としての責任の自覚を促すことが第一の目的とされ、これは、いわゆる「父母教育」の役割を担う。このような相談所の設置主体は、少年局・民間団体である。そこでの配慮権や交流権についての合意が家庭裁判所での判断の基礎となることもある。
  • 少年局の専門担当部署の援助は、共同配慮の「法律上の理想像」と「現実」の乖離を埋める役割を果たすもので、父母双方の希望を調整し、その家庭にとって最善の合意へと一歩一歩近づける試みが重ねられ、父母間の取決めを作成することが最終的な目的とされる。
  • 専門家立会いのもとでの本格的なメディエーションを実施している少年局もある。

家庭裁判所の役割

  • 離婚手続が係属すると少年局を通して父母に連絡がなされるが、家庭裁判所においても、夫婦間に未成年の子がいる場合、親としての配慮及び面会交流について夫婦を審問し、相談手続を利用できることを示さなければならない(FamFG128条2項)。
  • 父母に、メディエーションを含む裁判外の紛争解決手続に関する情報提供の無償の面談に別々に又は共に参加すること、及びその参加証明書の提出を命じることができる。この面談については、家庭裁判所が特定の人物や機関を指定することができる(FamFG135条)。
  • これらを通しても父母間で合意が形成されなかった場合には、離婚後の配慮権の帰属や交流権について、裁判所が判断を下すことになる。この局面では、少年局は、それまでの家庭裁判所との連携関係を解き、裁判所の権限から独立した立場として協力する。

単独配慮(親権)を家庭裁判所が認める場合の基準

  • 親の一方が単独配慮又は配慮権の一部委譲を申し立てた場合は、「共同配慮の廃止及び申立人への委譲が子の福祉に最もよく適合すると期待されるとき」(1671条1項2号)にのみ申立てが認められる。
    ①父母の親としての適格性
    ②父母の協力・・・父母間で子のための協力体制を築くことができなければ、共同配慮は子の福祉に適合しないとの判断を受ける。
    ③他方の親と子との結びつきに対する寛容性・・・ 父母は子と他方の親との関係を侵害し、又は養育を妨げる行為が禁止されており、(交流権、1684条2項)、寛容性が共同配慮の判断に影響を与えている。
    ④子の発達の促進・・・子の世話にその親が過去にどの程度積極的に関わってきたかということに加え、将来、どのように関わっていくことができるかに基づき判断がなされる。
    ⑤子の生活環境の継続性・・・親の一方が子を連れて転居する場合、親としての適格性、他方の親と子との結びつきに対する寛容性を比較した上で、転居の理由を考慮する。転居には、子と他方の親との交流の保護よりも重い「正当な理由」が必要とされる。
    ⑥子の意思・・・他方の親と子との結びつきに対する寛容性に問題があったり、子に忠誠葛藤がみられる場合には、比較的年齢の高い子であっても子の意思の重要性を認めていない。

面会交流の履行確保と情報提供請求権

  • 「父母は、それぞれ、子と他方の親との関係を侵害し、又は養育を妨げるあらゆることを行ってはならない。子が他の者の保護下にある場合も、同様とする。」(1684条第2項)とされている。「本条第2項に基づく義務が長期間又は繰り返し、顕著に侵害されている場合、家庭裁判所は、交流の実現のための保護(交流保護)を命ずることもできる。 」(3項3文)とされている。
  • 面会交流の履行確保のための強制手段は、秩序金( FamFG89条)並びに秩序拘禁(同90条)による制裁である。
  • 1回の秩序金の限度額は25,000ユーロで(同89条3項)、秩序金を取り立てることができない場合に秩序拘禁を命じることができる(同89条1項)。
  • 秩序金の決定が功を奏しなかった場合や功を奏する見込みがない場合、あるいは裁判を即時に執行することが必要不可欠である場合には、裁判所は、直接強制を命じることができる(同90条1項)。
  • 子と同居している親に対して別居親が行使する権利として、情報提供請求権が認められている。父母の一方は、正当な利益がある場合に、子の福祉に反しない限りにおいて、他の一方に対し、子の個人的状況に関する情報を求めることができる(1686条)。

2015-11-08 (日) 21:14:29
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