両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成29年2月5日、毎日新聞

「わが子に会えない」 父親18人の苦悩をルポ

 ノンフィクションライターの西牟田靖さん(46)が、離婚後に子供に会えずに苦悩する父親の姿をつづった「わが子に会えない」(PHP研究所)を出版した。自らも離婚後、一人娘に会うために苦労を重ねた西牟田さんに、父親たちに起きている現状を語ってもらった。【米田堅持】

父親からの問題提起
 西牟田さんは、神戸学院大学を卒業してIT企業に就職したが、8カ月で辞めた後、フリーのライターとなった。北方領土や竹島などを自らの足で歩いたうえで「誰も国境を知らない」(朝日文庫)▽「僕の見た『大日本帝国』」(角川ソフィア文庫)など、ニュートラルな目線のルポを書き続けてきた。最近では多数の本を収集した人たちを訪ね歩いた「本で床は抜けるのか」(本の雑誌社)のように身近な話題を掘り下げたテーマでも出版している。これらのルポも、先入観を排して一歩引いた中立的な視点で現場で奮闘する当事者たちを描いてきた。
 今回の「わが子に会えない」では、父親ばかり18人から聞き取ったエピソードがつづられており、母親サイドの話はない。これまでの西牟田さんの作品にはない、父親サイドのみで出版したことについて「母親から見た問題提起は数多くされていたが、父親から見た問題提起や体験が語られることはなかった」と執筆の動機を話す。自らも離婚を経験し「娘と面会するためにいろいろな苦労を重ねる中で、今まで見えてこなかった父親たちの言葉を形にしようと考えた」という。
父親たちのイタコとして
 父親たちは、自らが同様の境遇に置かれているので取材を受けてくれたが、それぞれの事情もあり3人が出版前に掲載を拒否したという。掲載された18人の言葉は、子供や離婚の経験の有無にかかわらず、一気に読むのは難しいほど重い。西牟田さんは「2人分はキーボードで入力したが、全員をキーボードで書き上げることは、自らの経験とも重なって手が止まってしまい不可能だった。音声入力ソフトを使って入力し、父親たちの言葉を伝える『イタコ』に徹することで書き上げることができた」と執筆時の心境を述べた。
男女同権のはずが
 取材を進めるうちに、父親たちの苦悩の背景には「硬直した既成概念が多くの苦悩と犠牲者を生んでいることに気づいた。男女同権と言いつつ、親権を例に挙げれば、個別の事情を精査せずに、(結論ありきで)母親とされるケースが圧倒的に多い」と西牟田さんは話す。
 そうした個別事情が反映されにくい背景のひとつに、西牟田さんは現場の人手不足を挙げる。「裁判所も含めて現場は圧倒的に人が足りない。親権だけでなく、子供との面会交流についても余裕がなく、実質的な審理が行われないことも珍しくない。それが『親権は母親、面会は1カ月に1度で2時間』という相場を形成し、画一的な判断が積み上げられてきた」という。そして「『勝訴の方程式』が生まれたことで、親子の幸せを無視したビジネス優先の弁護士が暗躍する土壌ともなっている」と指摘する。
共同親権をめざして
 父親たちの苦悩が表面化してきた大きな要因のひとつに、2001年の配偶者暴力防止法(DV防止法)の施行があるという。「危険な暴力から被害者や子供たちを守るべき法律が、家族を引き裂く副作用も起こしている。痴漢と同様に、DV(ドメスティックバイオレンス)といえば加害者は男性と決めつけられ、被害者が加害者になってしまうケースさえある」
 さらに西牟田さんは「男性が実質的な傷害罪の被害者だった場合でもシェルター利用のハードルは高く、加害者だった女性がDVを申し立てれば、男性側の言い分は一切無視されるのは、男性差別と言わざるを得ない」と語気を強める。また「急に子供に会えなくなるのは、父親から見れば災害にあったか拉致されたようなもの」とも語る。
 「日本では過去に家制度があり、別れたら母親は外へ出され、子供に会えない風潮があった。現在は逆になり、別れた子供に会うことを望む父親も増えている。子供は離婚しても多くは両親に会いたがるし、会わせるのが本来の姿だろう」と語る西牟田さんは、子供の気持ちを考えることが「子の福祉」を考える上で重要だと述べる。
 また、親権については「もちろん、子供や母親に危害を与えるようなケースの対策は必要だ。米国などでは親権はどちらか片方が持つのではなく、共同親権で男女の別なく子供に関わり、離婚時に行政が介入して子供の養育などについてきちんと取り組んでいる。日本でも、思考停止して親権は母親と決めつけるのではなく、共同親権を実現した上で、共同養育計画をたてていくべきだ」と提言する。
 今後については「母親サイドからも書いてほしいという声もある。男女が差別されず、離婚後も子供の幸せを一緒に考えられるようにすることに異論を挟む人はいないだろう。母親や子供の目線での取材も考えていきたい」と語った。

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