両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成28年1月1日、産経新聞

DV妻、急増中 男性に広がる被害、支援窓口が少なく…「このままでは危ない」

恋人や配偶者からの暴力(DV)に悩む人は多い。これまで、「女性は被害者」というイメージが強かったDVだが、最近は男性の被害者が増えている。男性が被害者になる場合、社会的な立場などを気にして泣き寝入りせざるを得ないケースも多い。相談窓口もまだ少なく、被害者が孤立しがちな課題もある。

 ■家にいられない夫

 「家にいるのが怖くてたまらない」。東京都内に住む30代の男性会社員は、妻と別居する2年前まで、妻から殴る、蹴るの暴力を日常的に受けていた。「リモコンの位置が違う」「すぐに返事をしなかった」など、きっかけはほんのささいなこと。しかし、妻は一度、気に障ることがあると、感情がセーブできず、血が出るまで暴力をふるうこともあった。

 「このままでは危ない」。男性は妻と極力顔を合わせないようにと、会社が終わっても終電近くまで漫画喫茶などで時間をつぶした。妻が寝静まったのを見計らって家に入り、自分の寝室のドアの前に机を置いて、「妻が入ってこないように」とバリケードを作ってからでないと寝付けなかった。

 「離婚」の文字が頭をかすめることもあったが、妻は離婚を拒否。妻から、こうした家庭の状況を「会社にばらすぞ」と脅され、打つ手が見当たらなかった。

 男性からは次第に笑顔が消え、仕事中も上の空になることが多くなった。そんな男性を心配した知人に付き添われ、やっとの思いで弁護士事務所を訪れた。

 都内に住む別の30代の男性は、一流大卒の妻から、高卒という自分の学歴をののしられる日々にじっと耐えている。 

 すぐに返事をしないと「生活態度がなっていない」。子供が産まれた後、「しつけがなっていない」。ことあるごとに「これだから高卒は」と否定し続けられ、「俺はダメなんだ」と追い詰められてしまった。周囲のアドバイスから離婚を考えても、まだ幼い子供たちが妻に引き取られる可能性が高いことを考えると、その一歩が踏み出せないそうだ。

 ■被害を言い出せず

 警察庁の統計では、DVの被害は年々増え続け、26年には過去最多となる約6万件となった。そのうち、男性の被害は10・1%で、22年の2・4%から4倍に増えている。男性のDV被害の相談を多く受け付けている森公任(こうにん)弁護士も「ここ4~5年で被害相談も増えた」と話す。

 被害が増える一方、「助けて」と声を上げられない男性も多い。森弁護士は「家庭内のトラブルを外には知られたくないという男性が多い」と分析。「職場や親にばれれば立場がなくなる」「子供と離れるのは嫌だ」という心理状態から、救急車で運ばれるほどのけがをしながらも、「穏便に済ませたい」と警察に被害を届けなかった例もある。

 ■無理解で孤立も

 こうした被害の実態がありながらも、男性が被害者になるケースの認知度は低く、理解不足から周囲からは「そんなはずない」という反応が返ってくることも珍しくない。そのため、森弁護士は「離婚を望む場合、立証できるものが何より必要」と力を込める。

 例えば、妻に暴力をふるわれた際の診断書や、現場の写真や音源といった客観的な証拠が、裁判などで重視されるそうだ。

 また、女性被害者の場合、避難用シェルターや専門の窓口などの支援が広まる一方、男性のDV被害者への支援はまだ薄いという課題もある。

 平成13年から男性向けの夜間の電話相談を開設している東京ウィメンズプラザ(渋谷区)の担当者も「シェルターを紹介してと言われても、男性の入れるところは少ない。そもそも、仕事もあるので隠れても意味がない」と漏らす。男性には相談窓口や支援策などの情報が少なく、孤立しがちな傾向もみられる。

 夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美さんは「男性が被害のDVは、これまでは、明らかになりづらかった。女から暴力をふるわれることは、恥ずかしくて言い出せなかった」と指摘。さらに、「『子供のため』と思って離婚できない人もいるが、母親が暴力をふるい、それに耐える父親を見て育った子供は、暴力もひとつの解決法と学習してしまう。将来、暴力をふるい、DVをする子供になってしまうかもしれない」と警鐘を鳴らしている。(中井なつみ、油原聡子)

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