平成26年11月19日、毎日新聞
ハーグ条約:国内初判断、母親に返還命令 大阪家裁
国境を越えて連れ去られた子の扱いを定めたハーグ条約に基づき、スリランカに住む父親が、母親と日本に帰国したまま戻らなかった娘の返還を求めた審判で、大阪家裁は19日、父親の主張を認めて娘を返すよう母親に命じる決定を出した。4月に日本で条約が発効して以降、子の返還を求めた国内の審判で決定が出されたのは初めてで、日本の裁判所が海外に住む親の元に子を返すよう命じた最初の事例となった。
代理人弁護士らによると、40代の父親、30代の母親、女児(4)の3人家族で、ともに日本国籍。家族は父親の仕事の都合でスリランカで暮らしていたが、6月に一家で一時帰国。父親は一旦スリランカに戻り、7月に再び日本に帰国。その際に父親に娘を引き渡す約束だったが、母親は引き渡しを拒んだ。当初は話し合いによる解決を図ったが、双方の主張が食い違い、父親が審判を申し立てた。
大阪家裁(大島真一裁判長)は、娘が学校に通っていたことなどからスリランカに生活拠点があったと認定。スリランカで暮らしても娘の成育に重大な悪影響はなく、母親に娘の引き渡しを拒否する正当な理由はないと判断した。母親は決定に納得できない場合、大阪高裁に即時抗告することができる。
4月のハーグ条約発効後、母親と一緒に英国に渡った子を父親のいる日本に戻すよう英国の裁判所が命令するなど、海外の裁判所が日本への返還を命じたケースはある。国内では、東京家裁でも海外に住む親が日本で暮らす子の返還を求める審判が進んでいる。【古屋敷尚子】