寄稿SeasonⅨ ①
Season 9 「離婚の子ども」考①
ボクの尊敬する1人に臨床心理士の棚瀬一代さんがいます。1943年生まれの一代さんは、78~90年に「いのちの電話」相談員を務めました。90年に京大大学院に社会人入学し、教育学の博士号を取得。12年間、大津家裁の家事調停委員。大学で教えました。
著書「離婚で壊れる子どもたち~心理臨床家からの警告」(光文社)の冒頭、一代さんはこう書いています。
「日本では未だに「夫婦の別れ」イコール「親子の別れ」になってしまうこともあるのが現実です。こうした状況は欧米諸国の間では極めて特異な状況であり、近年、国際結婚も増えてきたために、離婚後の子どもを巡っての争いが、大きな国際問題にまでなってきています」
「離婚後、(中略)子どもがどのように発達していくのかに関しては、日本では心理学者をはじめとする精神衛生の専門家の間でも、真正面から取り上げられることがほとんどありませんでした」
そこで、幸せな結婚生活を送りたいと考えている人たち、離婚を考えている人たち、離婚家庭の子どもたちを支える仕事をしている学校の先生やカウンセラーたち、裁判官や調査官や家事調停委員、弁護士や精神衛生の専門家たちに向けて書かれたのが本書です。
今年2月1日、「「離婚の子ども」の物語~喪失と成長のプロセス」の改訂2版が発行されました。親の離婚を経験した若者ら12人の物語が収められています。コミュニティ「親の離婚を経験した子ども」(ミクシィ)管理人の中原和男さんと公認心理師の綿谷翔さんがまとめました。
この中に登場する成瀬義則さん(仮名、20代・学生)は、「母に会いたい」と言うと父に怒られるため、父には内緒で母に会いに行っていたそうです。「私はこれまで、父や母の生々しい浮気の現場を見てきました。愛なんて、この世に存在しないと考えています。たぶん私は一生恋愛も結婚もしないでしょう」と述べています。
離婚によって、子どもの心は深く傷つき、大きなトラウマが残ることが分かります。管理人の中原さんは「彼、彼女らを支えられる社会に一歩でも近づいていくための一助となるよう願ってやみません」と書いています。
【気弱なジャーナリスト・Masa】
更新 2023-04-03 (月) 06:30:09
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