両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和4年6月26日、FNNプライムオンライン

離婚後の「共同親権」導入は是か非か、歓迎論と慎重論が交錯

家族法制の見直しについて議論している法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会に対し、法務省が6月21日「離婚した父母双方を親権者にできる『共同親権』の導入」案を提示した。日本では現在、離婚すると父母のどちらかに親権を与える単独親権の一択しかなく、熾烈な親権争いが繰り広げられる原因となっていた。

議論の結果は、8月にも民法改正の駐韓試案として取りまとめられる見通し。

こうした動きを受け、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、6月26日、有識者たちが「離婚後の共同親権」の是非について議論した。

ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「子どもの幸せ、健全な養育、成長を考えると絶対に共同親権にしなければいけない」と強調した。

弁護士の本田正男氏は、家庭内暴力(DV)や児童虐待がある家庭では、共同親権制度を採用した場合、被害の継続や拡大が危惧されることを念頭に、「反対というか、きちんと考えたほうがいい。個別的に考える必要がある」と述べ、離婚後の共同親権の導入に慎重な姿勢を示した。

タレントで羽衣国際大学現代社会学部教授のにしゃんた氏は、多くの国、とりわけ先進国では共同親権制度を採用していることを踏まえ、「当然、共同親権があるべき姿でもっとも理想的な形だ」と断じた。

離婚後の共同養育を支援している、しばはし聡子氏は離婚する夫婦が「共同親権」と「単独親権」を選択できる制度の導入を主張した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
6月21日に法務省が法制審議会の部会に離婚後の共同親権導入などを盛り込んだ中間試案のたたき台を提示した。共同親権を導入すべきだと考えるか。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長):
子どもの幸せ、健全な養育、成長を考えると絶対に共同親権にしなければいけない。問題点があれば、個々の問題として解決することが大事なのであり、父母がともに子どもに愛情を注ぎ、注意をし、養育し、励まし、時には叱り、そして子どもの成長を一緒に見届けるという意味での共同親権は本当に大事だ。

松山キャスター:
本田さんは共同親権に反対する署名活動もしている。なぜ反対するのか。

本田正男氏(弁護士):
反対というか、きちんと考えた方がよいと思っている。3点申し上げる。一点は家族の形は様々で共同親権になったらこうなるというような算数の問題を解くように簡単に答えが出るわけではない。非常に個別的に考える必要がある。2点目は、裁判所のインフラが非常に脆弱だ。日本の裁判所は米国のように非常に細かくは全くできない。丁寧にやれば裁判所に負荷がかかりすぎてしまい、できない。3点目だが、子どもは生まれた時は親なしでは生存できず、親のほうが子どもを自由に操作できるような感覚になり、勘違いしてしまう。どうしても子どもにプレッシャーを与えすぎてしまう感じになってしまう。もう少し子どもの意向が汲めるような状態を出さなければいけない。

しばはし聡子氏(共同養育サポートりむすび代表):
数々の懸念事項あるとは思う。離婚しても子どもにとり親が二人であるというすごく当たり前のことを浸透させるという意味でも共同親権が選択できる制度を導入するべきだ。ただ、両方選択できるというときに逆に親権を巡って争う構造になることが懸念される。

にしゃんた氏(タレント、羽衣国際大学現代社会学部教授):
当然、共同親権があるべき姿であり、もっとも理想的な形だ。現状は「三方良し」になっていない。親権を持つ片親だけが喜び、往々にして子どもと親権のない親が泣き寝入りしている。「両親良し、子どももよし」、あるいは、「子ども良し、親も良し、社会も良し」までもっていく必要があり、今回良いチャンスが巡ってきているのではないか。

櫻井氏:
裁判官、司法の方が、裁判官を増やすことにずっと反対してきたという実態があり、裁判官の数が足りない現実がある。裁判官が足りない現実に合わせて子どものことを、家庭のことを今の歪な単独親権の形にしておくのは、本末転倒で子どものことを考えていない議論だ。

松山キャスター:
共同親権を考える上でDVの問題がある。DVが本当にあったのか、あるいは、DVがあったと主張した場合の子どもの親権をどう考えるか。

しばはし氏:
身体的暴力は割と白黒が分かりやすい。多分一番ここで問題になっているのがモラハラと言われる精神的なDVだ。それは夫婦間ではすごく尺度が違い、指標がない。DVをされたと訴える母親、DVはしていないという父親というのはよくある。どちらが嘘をついているわけでもなく、それぞれが違う物語だというところがある。モラハラはDVだから子どもを合わせないほうがいいと決めてしまうのはちょっと行きすぎだ。一方で、実際に本当に精神的なDVを受けて相手と関わるのが難しい方については、第三者の支援を入れるなりして、子どもをきちんと面会させるという部分は切り分けて考えていく必要がある。

松山キャスター:
DVが実際にあったかどうかを認定できる制度が日本に整っているかかという問題がある。

櫻井氏:
男が子どもを連れさられて、妻からDV夫だと言われる。本人はもうびっくりする。DVした記憶はない。暴力的にもない、言葉の上でもやった記憶はないのにDV夫だと言われ、子どもを連れさられて、離婚になり、親権を取られて、十何年も子どもに会えていない。最高裁まで争ったケースだ。あなた(山田氏)は妻の側に立った弁護士の一人だ。最高裁まで行って夫のDVは認められなかった。DVをされたという申告だけで日本ではDV夫、DV妻だ。DVは絶対許してはならないことは確かだ。DVをした夫や妻はきちんと罰せられるべきだ。DVは本当にあったのかということについて欧米などではすぐに警察を入れる。DV助けてくださいと言えば、すぐに来て現場で当事者の話を聞いたり、近所の話を聞いたりして事実認定をする。DVがあれば夫を家から放逐するとか、妻や子どもに接触させないなどの罰がある。日本では片親がいない間にもう一人の片親が子どもを連れて逃げ、DVがあったと申し立てるケースがある。DVが本当にあったかについて客観的な第三者が調査する仕組みを確立していかなければフェアではない。

本田氏:
もちろん殴るなどは論外だが、子どもにプレッシャーを与えてしまうことがある。精神的な部分で目に見えない。言葉により目に見えないとしても、さまざまなトラウマを抱えている人はいっぱいいる。私の依頼者の中で40歳になっても50歳になっても親子関係の葛藤に苦しんでる人は大勢いる。DVというと典型的な殴る蹴るだけではない。もう少し幅広く精神的なダメージを与えるような有害な状況が家庭の中にある場合があるというところを見てもらいたい。

松山キャスター:
共同親権か単独親権かを選べるようにするという考えも出てきてた。

櫻井氏:
共同親権を基本にするというところをはっきりさせたほうがいい。片方の親が性犯罪をしたとか、DVをしているとか、どうしても許せない状況がある場合は、もう片方の親に任せるという意味の単独親権があっていいとは思う。けれども、法体系としては共同親権を基本とするところに軸足を置かないと。法務省の提案にも一応、共同親権という言葉は入っているが、これはものすごく狭い範囲の共同親権だ。学校をどこにするか、何か大きな病気をした時の治療法をどうするか。共同親権は父母両方が子どもに関わり、時間を共に過ごし、子どもの顔を見ながら、子どもの声を聞きながら、子どもの心理を推測しながら、本当にそこに大人の親としての愛情や配慮を注いでいくということが共同親権だ。どこの学校にするか、大病したからどうするか、宗教をどこにするか、キリスト教にするか、仏教にするのかを決めるときに共同親権と言っているが、それはごく一部のことだ。法制審の華族制度部会の委員にはすごくリベラルな人権派と言われる人たちがいて、その人たちが主導してシングルマザーだけを応援するというような傾向がなきにしもあらずだ。シングルマザーの応援はとても大事だと思うが、もっと視野を広げて、子どもの幸せ、子どもの健全な育成を考えたところに、わが国の法律は立脚しないといけない。その意味では、共同親権か一部単独親権かではなく、「原則共同親権」だ。しかし、どうしても親に問題があるときは、これは単独親権だね、という工夫がなされるような法制度にしないといけない。

本田氏:
結局調整のところで揉めてしまう。例えば、学校の話があったが、横浜市の隣にあるA小学校とB小学校のどちらに入るかでもめている。相手方代理人は「裁判所で決着すればいいのではないか」と言う。そんなこと言ったら4月になってしまう。本来は二人が調整できることが大前提だが、イコールの関係がないとただもめるだけだ。そのもめる家庭の嵐の雨風を浴びるのは子どもだ。離婚で裁判になるのなんて1%ほどだが、結局我々(弁護士)のところに来るようなのはものすごい嵐が吹いているような状態なので、むしろそういう状態から切り離されている方が子どもにとっては幸せなのではないか。

しばはし氏:
実際、裁判所を通して離婚調停などを行っていくと別居前よりも関係が悪化する事例がよくある。どちらが親権をとるかもそうだが、離婚は破綻主義ではなく有責主義となると、相手が悪いから離婚すると。書面で相手の批判をしていく。そうなると別居前よりもより関係が悪くなって離婚後にとても共同養育できるような関係にならないというケースもある。むしろ大事なことは、親権をどちらにするか選択することよりも、別居後にすぐに子どもと会える環境をまず制度として作ること。離婚後も共同養育できる関係性をつくっていくために例えば裁判所にカウンセリングの制度を設けるなど、そういう環境をつくっていくことの方が大事だ。

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