両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成27年12月21日、毎日新聞

最高裁判決を受けて/5止 離婚後も続く「親子」 子どもの視点必要

 憎しみ合い、口を開けば悪口ばかりだった離婚夫婦の関係を変えたのは、長男の存在だった。横浜市の商社経営、清水知行さん(32)は2011年に前妻と離婚した。今ではそれぞれが再婚したが、小学生になった長男が、2人を緩やかに結びつける。

 日本では毎年20万組以上が離婚する。近年は家庭裁判所に調停を申し立て、親子の面会のルール作りを求めるケースも増えている。

 清水さんの場合は、生活のすれ違いが原因だった。離婚協議で長男との面会を巡って意見が対立した。前妻は「もう会わせたくない」とかたくなだった。清水さんは親権を渡し、養育費も払う代わりに、長男との面会だけは強く求めた。「恋愛は誰とでもできるけれど、父親は自分1人しかいない」。そう説得を続けると、前妻も「本当のお父さんじゃないと言えないこともあるのかな」と納得した。
 長男との面会を重ねているうちに、前妻から声が掛かった。運動会など保育園のイベントにも「パパ」として顔を出した。「元夫婦」は「親友同士」になり、悩みを聞いて助言する間柄に変わった。

 前妻の再婚を応援し、自分も再婚相手に伝えた。「長男が向こうの家庭で孤立したら引き取る。分け隔てなく子を受け入れるのが親の義務だ」

 今年、再婚相手との間にそれぞれ子どもが生まれた。清水さんは定期的に泊まりにやってくる長男に「居場所がなくなったら、いつでも来い」と言い聞かせる。今はまだ、長男以外が互いの家庭を行き来することを控えているが、いつかは両方の家族が顔を合わせることも考えている。

     ◇

 夫婦双方が初婚の割合はかつて9割近かったが、1999年に8割を切り、昨年は74%まで低下した。最近は「ステップファミリー」と呼ばれる子連れ再婚型の家族が増えている。

 母が離婚、再婚、事実婚を何度も繰り返す家庭で育った新川明日菜さん(27)は、7歳の時に「新しい父」が現れた時の驚きが忘れられない。「父じゃない人が父のように振る舞うのが嫌だった」。姓を変えたくないと母に懇願した。精神的に行き詰まる度、祖父母の元に駆け込んだ。

 自身の経験を生かそうと、NPO法人「Wink」で離婚家庭の子を支援する。再婚家族で孤立する子は多いという。女性が子を連れて再婚するだけでは、新しい夫と子の間に法律上の親子関係は生まれない。家族の絆を強めるために養子縁組する例も多いが「いつ壊れるか分からないのに安易に法律関係を作るのは親のエゴ」だと思う。

 再婚した2人は幸せかもしれないが、新しい親を素直に受け入れられない子もいる。「実の親は逃げ場になる。離婚したら親子関係はおしまい、とするのは子どものためにならない」

 多様化する家族のルール作りを考える時、子どもの視点が欠かせない。【山本将克】=おわり

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