平成24年9月14日、東京新聞
離婚後の子育て 民間の力も生かしたい
離婚による別居で、一方の親が子と会えなくなる例が後を絶たない。国際結婚が破綻した夫婦の子の扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟準備も進んでいる。離婚後の子育てを考えたい。
三十代の男性は関東地方に暮らす娘の運動会に出掛けたが、母親に拒まれ娘に会えなかった。かつて裁判所に娘との面会を求める審判を申し立て、一~二カ月に一度、二時間の面会を認められたが、子の成長は早い。男性は「もっと一緒にいたい」と訴える。
子どもと会えない親が面会交流を求めて裁判所に調停や審判を申し立てるケースが増え、この十年間で三・五倍に。昨年度は全国で計一万六十八件に上った。そのうち、面会を取り決められたのは約半数で、月一回以上はさらに半分。残りは二カ月に一度か年数回だ。罰則はなく、決めた通りに実行されない場合もある。
一方の親が無視される背景には未成年の子の親権問題がある。日本では婚姻中は父母双方が親権を持つが、離婚によって一方だけの単独親権となる。「家」を守るためとされた制度が親権をめぐる夫婦の争いを引き起こしている。
裁判所は親権決定時に同居する親を有利にしてきた。そのため、配偶者から暴力を受け、子を連れて逃げる事情がなくても、「先に一緒にいた方が勝ち」とばかり、連れ去りが横行する。核家族時代の今は夫婦が協力して子育てするのが当然になった。違法でなくても、一方の親と引き離すのは子のためにならず、親もうつ状態に陥ったり、命を絶った例がある。
日本が一九九四年に批准した国連の「子どもの権利条約」は、子を両親から引き離すことを禁じ、面会交流を権利とする。別れて暮らす親とも会い続けることが情緒の安定につながるともいわれ、日本でもやっと、今春施行された改正民法で離婚時に面会交流について取り決めを促すようになった。
離婚後も共同親権の米国では、両親で子育てや面会交流の計画を決めないと離婚できない。毎年、推計十五万人以上の親に会えない子どもを生み出している日本も、生き別れをよしとせず、「共同養育」の視点にたった公的支援が重要になってくる。夫婦で協力できないなら、第三者が支える方法もある。面会交流を援助する民間団体やNPOをどう増やすか。別れて暮らす親がないがしろにされず、共に子育てできる態勢を充実させるべきだ。