平成23年12月8日、大分合同新聞
離踏後の別居親と子ども 面会交流のルール作りを
両親の離婚後に、離れて暮らす別居親と子どもが会い、親子の絆を育む面会交流。5月の民法改正で初めて明文化され、今後は離婚時に、その方法について協議しておくことになった。しかし現実には、同居親が子どもと別居親との交流を拒んだり、片方の親が一方的に子どもを連れ去る「引き離し」や「片親疎外」が後を絶たず、子どもの情緒面への悪影響も指摘されている面会交流の在り方について考える。
日本では離婚後、父母のいずれかだけで子どもを育てることが多いが、欧米や中国、台湾などでは、DVなどの極端な場合を除き、夫婦の離婚後も双方が子どもに関わって養育するのが一般的となっている。
福岡市で11月にあった離婚後の親と子の引き離しについて考えるシンポジウム(主催“Kネット福岡)。離婚後の親子交流を研究する大正大学人間学部臨床心理学科の青木聡教授が講演し、「欧米は、別居親と子どもの定期的な面会交流を重視し、仲介システムも整っている。子どもが片方の親の影響を受け、正当な理由なくもう一方の親との交流を拒む『片親疎外』を防ぐ取り組みも進んでいる」と解説した。
青木教授によると、米国では子どもを持つ夫婦が離婚する際、面会交流を含む子どもの養育の重要性や適切な対応、法的手続きなどについて学ぶ教育プログラムを受講し、養育プランを提出することが義務付けられているという。 ・
例えばアリゾナ州では、別居親と子どもが毎週1回夕方数時間に加え、隔週で3泊4日を一緒に過ごすのが標準的なプラン。プランの定期的な見直しや、関係が悪化した親子のフォロー体制、子どもの代理人制度まで整う。面会交流をつなぐシステムが始まったばかりの日本では、裁判で提示される面会交流時間は月1回数時間程度で、欧米とは大きな差がある。
引き離してはダメ 「片親疎外」心に悪影響
米国が面会交流を手厚くバックァツプする背景には、片親疎外が子どもに自己肯定感や基本的信頼感の低下、抑うつ傾向などの悪影響を及ぼすという研究報告がある。2010年に青木教授が国内で大学生に実施した調査でも同様の結果が出ており、「片親疎外は、子どもへの情緒的虐待。子どもの福祉を考えた離婚後のシステム作りが必要」と青木教授は訴える。
シンポジウムには、幼少時に親が離婚し、母親と長く連絡が途絶えていた男性(18)もパネリストとして出席。「母に会いたかったけれど、父が怖くて言えなかった。親に裏切られたと思ったら人を信用できなくなり、荒れた時期もあった。もっと子どものことを考えてほしい」と話した。(吉田美佳)
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