両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成28年11月23日

J-CASTニュース

離婚後の子との「面会」どうあるべきか 「親子断絶防止法案」めぐり議論続く

 離婚後の父母、そして子は、いかにして付き合うべきなのか。超党派の議員連盟により、別居親との交流などについて定める「親子断絶防止法案」の提出準備が進められている。

 正式名称は「父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律案」。保岡興治元法相を会長とした議連が、いまの臨時国会提出を目指している。

■目的は「子の最善の利益」

 法案は、いわゆる「子どもの権利条約」を踏まえて、離婚後も父母と子が継続的関係を持つことが、子の「最善の利益」になるとの前提に立つ。その上で、夫婦は離婚する前に、定期的に子と会う「面会交流」や、養育費について書面で取り決めるよう努力義務を課し、離婚後も子と交流するよう明記している。

 法整備の機運が高まる背景には、片方の親による子の「連れ去り」「引き離し」の問題がある。単独親権の日本では、離婚後は父母どちらかのみに親権が与えられる。親権者を決めるうえで、重視されるのが「継続性」。そこで、一方の親がより有利になろうと、もう片親に会わせないケースがあるのだ。

 今回の法案は、子の立場に立った法案とされるが、反対する人も多い。たとえば朝日新聞2016年9月29日朝刊では、シングルマザーを支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長が、養育費不払い時の対応や、別居親と会いたくない子の存在などを挙げて、懸念を示している。

DV被害をどうするのか

 なかでも反対派から出ているのは、家庭内暴力(DV)被害にあっている親が、子を連れて別居しにくくなるのではとの意見だ。法案にはDVがある場合に「特別の配慮」をするとの条文もあるが、その具体的な内容は書かれていない。

 「特別の配慮」については赤石氏が問題視するほか、毎日新聞も10月1日朝刊で、専門家やDV被害者の弁として「DVや虐待は証明できない場合も数多くある。特別な配慮といってもあてにできない」と伝えている。武蔵大学の千田有紀教授も「Yahoo!ニュース個人」で10月中旬から4回、主にDV被害者を想定して、問題点を指摘した。

 では、これらの意見について、賛成派はどう考えているのか。臨床心理士の石垣秀之さんは、離婚父母から面会交流や監護者指定などの相談を受け、DV被害者とも接してきた立場から、この法案に賛成している。

 「本法案は、離婚や別居によっても親の責任をまっとうする社会を目指す理念法です。債務者に『養育費の支払いは当然である』と認識させるほか、養育費を『不要である』と考えたり、私物化しようとしたりする同居親を諌め、子の福祉に反映される使途を促進する社会的圧力を作り出すことができると考えられます」

 では、DVがあった場合は、どう対応すればいいのか。石垣さんは、

 「子がその影響を受けておらず、加害者が子を愛し適切な対応をしていたのであれば、子からその親を奪ってはなりません。加害者を更生させるためには加害行為についての反省が勿論必要ですが、愛する子を奪うようなやり方ではかえって恨みを助長する危険性すらあります」

 と主張する。

合理的な根拠があれば、親権の停止や剥奪も
 
 子の面前で行われたDVの場合は、子の心理的ケアや、加害者の反省や謝罪、更生がなされた後でなければ、直接的な面会交流は行うべきでないとする。ただし、子が許可するならば、写真や手紙などでの「間接交流」まで奪うことは、必ずしも子の福祉にかなうものとは言えないという。

 「一方で、子に生涯消えない身体的・心理的な傷を与え『加害者の更生が不可である』と合理的な根拠の元に判断される場合には、親権停止や剥奪を含め、毅然とした対応をもって子を守る制度が必要であることは言うまでもありません」

 条文で定められる「特別な配慮」としては、どのようなことが考えられるだろう。

 「特別な配慮とは、加害者と子を面会交流させないように禁止するものではなく、被害者が加害者によるDVの影響を免れるために、連絡調整の方法や当日の送迎・同席に関して、被害者側の意向を最大限くみながら実施することと言えます」

 一方で、石垣さんは、DV法に証拠主義を採用し、「虚偽DV」を訴えるよう教唆した人物への罰則も盛り込むべきだと主張。

 「親子の断絶を予防し、子が双方の親の愛情を受けて育つならば、次世代においてDVの加害者が生まれる世代間連鎖を断つことが可能となります」

 と語っている。

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