寄稿SeasonⅩ ④
Season 10「クレイマー以後」考④
1980年1月1日、全米に先駆けてカリフォルニア州で新法「ジョイント・カスタディ(共同子育て)法」が施行されました。
これ以前から法改正を先取りする形で、自発的に離婚後の共同子育てをしてきた人たちがいました。これらパイオニア的生き方をした人たちの存在があったからこそ、法改正が促され、施行された法律を人々が受け入れる下地が出来上がっていたのも事実です。
法務省24カ国調査によれば、単独親権のみが認められている国はインドとトルコだけであり、その他は離婚後も共同・分担して子どもを養育する共同親権を採用しています。
子育て改革のための共同親権プロジェクトが編集した「基本政策提言書」(通称・青本)によると、これらの国々も従前は単独親権を採用していましたが、映画「クレイマー、クレイマー」(1979年)や「子どもの権利条約」の批准を機に、共同親権制度に切り替えました。米国は1980~2000年代に州ごとに共同親権へと移行しました。
棚瀬一代さんはルポルタージュ「『クレイマー、クレイマー』以後」(1989年初版発行)の中で、「(共同子育て法の特徴は)旧法の背後にある、離婚した親に子どもの養育に関して協力・協働を期待することはすべきでないし、またできないことであるという考え方を排斥し、その代わりに離婚後の子どもと両親との関係の重要性を強調した点にある」と書いています。
映画「クレイマー、クレイマー」では、父親が子どもにけがをさせたこと、母親が子どもを父親の元に残して家を出たことなど、いかに相手が親として「不適格」であるかを証明しようとし、相手の弱みを暴き立て、傷つけ、追い詰めるといったことがなされました。でも、共同子育て法の施行に伴い、共同子育てに反対する親による他方の親の不適格証明は非常に限定的に用いられるようになったということです。
棚瀬さんは「不適格証明は他方の親に麻薬中毒、アルコール中毒、子どもに対する性的虐待など、かなり特殊な事情がないかぎり不可能に近いといわれている」と書いています。
【気弱なジャーナリスト・Masa】
更新 2023-05-22 (月) 06:54:41
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