令和5年5月12日、読売新聞
離婚後の親権 子供への責任を果たす制度に
離婚した夫婦の対立が深まり、そのしわ寄せが子供に及ぶケースが少なくない。子供の生活をいかに守るか、国は議論を尽くしてほしい。
子供の親権について、法制審議会の部会が、離婚後に両親の双方が親権を持つ「共同親権」を導入する方向で検討することを決めた。今後、具体的な制度設計を議論していくという。
離婚は年20万件近くに上り、未成年の子供がいる夫婦は6割を占めている。現行の民法は、離婚した夫婦のどちらかが親権を持つ「単独親権」を規定している。このため、親権のない親が子育てに関われないという批判がある。
親権は、未成年の子供の世話や教育、財産管理に関する親の権利であり、義務でもある。夫婦関係を終えても、双方が子育てに責任を持つのが本来の姿だろう。
海外では共同親権が主流だ。日本人と国際結婚した外国人が婚姻の破綻に伴い、子供を連れ去られたと訴える事態が問題視されており、単独親権に対する海外からの風当たりも強い。
共同親権の導入により、離婚した夫婦がともに子育てに関与する機運が高まることを期待したい。子供にとっても、両親と接点を持ち続け、愛情を感じながら成長できる意義は大きいはずだ。
ただ、検討すべき課題は多い。両親が離婚した子供の大半は、母親と暮らしているが、母子家庭の6割は父親から養育費を受け取ったことがないという。離れて暮らす親と子供が会う「面会交流」も、十分に実施されていない。
共同親権が導入されても、現実には子供は両親のどちらかと暮らすことになる。子育てについて、離婚時によく話し合っておかなければならない点は変わらない。
日本では、当事者同士の話し合いによる協議離婚が大半を占め、裁判所などの第三者が関わらないケースが多い。養育費や面会交流に関する事前の取り決めが十分に行われているとは言い難い。
海外には、離婚の際、養育費や面会交流の内容を書面にまとめ、社会福祉事務所の認可を得る制度を設けている国もある。こうした事例も参考にしてほしい。
家庭内暴力(DV)や子供への虐待が離婚の原因になる場合がある。加害者には親権を認めないなど、柔軟な運用が必要になる。
夫婦関係がこじれると、離婚した相手に養育費を渡したくないといった気持ちになりやすい。養育費や面会交流は、子供のためにあることを改めて周知したい。
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