令和5年12月19日、産経新聞
法制審部会に「共同親権」の試案提示 離婚後、DVなら単独親権
離婚後の子育てのあり方を検討している法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会が19日、開かれ、離婚後に父母双方に親権を認める「共同親権」を原則とする要綱案の試案を示した。ドメスティックバイオレンス(DV)など「子供の心身に害悪を及ぼす」と裁判所が判断した場合は、どちらかの単独親権とする。来年初めにも要綱案を取りまとめ、政府は早ければ来年の通常国会に民法改正案を提出する見通し。
親権は子供の身の回りの世話や財産を管理する権利の総称。
試案では、親権の有無にかかわらず、両親に子供を養育する義務があることを初めて明記。両親が子供の人格や互いの人格を尊重して子育てに協力することを求めた。
離婚後の親権は双方の合意で共同親権か単独親権を選べる。
裁判所に判断を委ねる場合は原則、共同親権とする。裁判所が判断する際にDVや子供への虐待が懸念されれば、単独親権とし、共同親権を認めない方針を明確化した。
子供と別居している親が同居親に支払う養育費には、他の債権者などより優先して支払いを受けることができる「先取特権」を付与。双方で養育費の金額を合意できない場合でも最低限支払うべき金額を示す「法定養育費」を設定する。
別居している親と子供との面会交流については、家庭裁判所が審判の過程で子供の心身の状態を考慮して試行的な実施を促せる制度を設ける。
また、子供の祖父母らが父母を通さずに家庭裁判所に直接、子供との面会交流を申し立てられる仕組みも提案した。
「子供中心の制度に」
棚村政行・早稲田大教授(家族法)
今回示された家族法制に関する要綱案試案では基本的な規律として父母が子供を養育する責任を負い、子供の関係で人格を尊重して協力すると明記したことが重要だ。
こども家庭庁ができるなど、大人の考え方を子供に押し付けるのではなく、子供の人格を尊重し、子供を真ん中に置く流れを民法の中でも位置づけることになる。
離婚後の親子の関係は多様で、共同親権と単独親権、それぞれが適切なケースがある。試案で裁判所が共同親権の可否について考慮すべき事情として、ドメスティックバイオレンス(DV)などを具体的に示した点は高く評価できる。
離婚後の子育てを適正な制度にするには法改正だけでは不十分。政府は運用の明確化と支援も進め、人的・資金的な投資もすべきだ。
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