令和3年9月7日、NewsCrunch
離婚後の子育てについて考える。日米でこんなに違う親権制度
実子誘拐
親による「子どもの連れ去り」問題。日本とアメリカでの親権制度の違いを、メディアでの歯に衣着せぬコメントでお馴染み、弁護士でもあるケント・ギルバート氏が解説。
夫婦間でのいざこざが原因で、一方の親が無断で子どもを連れて行方をくらましたり、実家に帰って連絡を遮断する親による「子どもの連れ去り」問題。そもそも海外では犯罪となってしまう親による「子どもの連れ去り」が、日本で行われる背景には、日本とアメリカでの親権制度の違いが少なからず影響を与えているという。メディアでの歯に衣着せぬコメントでお馴染み、弁護士でもあるケント・ギルバート氏が解説する。
※本記事は、はすみとしこ:編著『実子誘拐 -「子どもの連れ去り問題」日本は世界から拉致大国と呼ばれている-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
海外から厳しい目を向けられている日本
国際結婚や国際離婚も増えた今日、子どもの連れ去り問題について、日本は世界中から厳しい目を向けられています。すでに海外メディアは、この問題を大きく取り上げています。
フランスのマクロン大統領までもが、この日本の親による「子どもの連れ去り問題」に不快感を表しました。にも関わらず、日本人の多くが問題の深刻さを理解していません。それどころか、その存在さえも知らない人がたくさんいます。不思議なことに、日本のメディアは、この問題を大きく取り上げません。国会でも、救済法の議論がずっと足踏みしています。
こうした状況に、子どもと会えない多くの親が不安と不満を募らせています。この問題が抜本的な解決に向かわない理由の1つに、DV(ドメスティック バイオレンス = 家庭内暴力)の問題があります。
つまり、一方の親による「子どもの連れ去り」を禁止すれば、DV被害者が子どもを連れて加害者から逃げることができなくなってしまうではないか、という反対意見があるのです。たしかにDVに苦しむ人も多くいます。そうした方々を強力に救済する必要はあります。
しかし、一方で「子どもの連れ去り」問題の多くのケースにおいて「虚偽DV申告」という事態が発生しているのもまた事実です。自らの子どもの連れ去りの正当化のため、DV被害者であると嘘の申告をするのです。こうした場合、連れ去られた親は、いわば虚偽DV被害者という立場に追いやられます。DV被害者の救済と同時に「虚偽DV被害者」もまた救済されるべきなのです。
どちらか一方に偏ることなく、どちらも救済しうるよう、国は勇気と知恵を絞って対策を講じるべきです。それこそが、最大の被害者となる子どもの救済に資する唯一の道です。
今日、子育ては男女が協力すべきとの認識が高まっています。3組に1組が離婚をする離婚大国となった日本。これほどまでに離婚が当たり前となった社会において、離婚後の子育ての「男女共同参画」は強い社会的要請です。
にも関わらず「子どもの連れ去り」という蛮行が、未だに横行している事実は看過できません。この事実は、私達が子どもを所有物のように扱ってきた証拠なのではないでしょうか。私たちは今一度、子どもの幸せについて深く考えてみる必要があると考えます。
日本は「単独親権」、米国は「共同親権」
私は米国カリフォルニア州の弁護士でもあり、日本に長年住んでいる米国人として、米国での離婚後の親権の問題に関して少し記しておこうと思います。 日本では、この連れ去り問題の当事者や団体の多くが「共同親権」にすれば、日本の子どもの連れ去り問題が解決すると考えているようです。
しかし、これは大きな誤解に基づいていると言わざるを得ません。 日本では離婚後の子どもの親権に関しては「単独親権」(父親か母親の一方が親権を持つ)なのですが、米国では「共同親権」といい、離婚後も両親が親権を持ちます。
この問題は複雑で、米国での例をそのまま日本に当てはめれば解決するのかと言えば、国の生い立ちや文化などの違いを考えたときに、解決策になり得るとは思えませんが、“参考にはなる”とは思っています。
子どもの連れ去り問題での犠牲者は誰なのか? ですが、まず一番の影響を受けるのが、 連れ去られた「子どもたち」です。今まで毎日、仲良く遊んでもらったり、さまざまな事を教えてもらったり、面倒を見てもらっていた片方の親から、もう一方の親のエゴによって強制的に引き離されるわけです。
そして、このことによって、子どもの精神状態は大変不安定になります。なかには、そのことだけで、精神疾患に陥った子どもたちも少なくありません。登校拒否をしたり、薬物に手を染めたりするのも、片親の子どもの場合が多いのは、各調査でも明らかになっています。
もう1人の被害者は、連れ去られた側の親です。 ある日突然、配偶者と子どもが消えてしまいます。その背後には「婦人相談所」などの機関が関わっているという話もあります。
その連れ去られた親も、仕事が手につかずに精神疾患に陥ったり、自殺したりと悲惨な状況にあります。何ヶ月も、何年もかけて子どもの居場所を見つけて、取り戻しに行って逮捕された親も多くいます。驚くことに、連れ去られた被害者には、裁判官や弁護士もいるということです。
共同親権は権利であると同時に義務でもある
米国では離婚後、どのような制度になっているのかを簡単に説明します。州によって若干の違いはありますが、ここでは、カリフォルニア州の場合に限定してご説明いたします。米国では離婚後は「共同親権」の制度を採っています。
米国が「共同親権」だから、日本でもそうするべきだというのではありません。日本と米国では、国そのものの生い立ちも違います。日本人が考える方法が日本には最善と考えますので、私の話は参考程度にしていただきたいと思います。
「共同親権」は、米国では“Shared Parental Authority” (シェアード・ペアレンタル・オーソリティ) と言います。この他に「共同養育」を “Shared Parental Custody” (シェアード・ペアレンタル・カス ティディ)と言います。
離婚後でも、双方が親権を持つわけですが、この親権は「権利」だけではなく「義務」も付随します。子どもが成人になるまでは、その監護義務があります。そして、その費用に関しても、双方の収入の合計を半分にして、収入の多いほうが少ないほうに基準に沿った差額を支払う義務があります。
この義務を怠ると、給料の差し押さえ・ローンを組めない・公務員になれない・公の仕事を受けられない、・自動車運転免許証を持てない。自動車を購入できないなど、さまざまな制裁があります。 しかし同時に、子どもに会う時間も、お互いの親が最大限に努力し、多くの時間を子どもと過ごせるようにする義務があります。これを怠ると、ともすれば、児童虐待になる場合もあります。円満な婚姻関係の解消であれば、当然、これらの問題は起きません。
しかし、片方の浮気が原因や、その他の原因で夫婦が憎しみあった場合には、子どもを盾にした訴訟合戦に発展します。米国の訴訟には多額の弁護士費用が必要になります。この多額の弁護士費用が、ある意味、訴訟への進展を思いとどまらせる効果がある場合もありますが、逆に相手を脅す材料にも使われます(ここは日本には当てはまらない部分です)。
金銭的に余裕がない側は、訴訟になることを避けるために相手の出す条件を泣く泣く飲まなければならない場合もあります。訴訟になる原因の多くは、お互いが同等に持っている「親権」を理由に争いますので、ある意味、決着が付かない長期戦になり、双方が大金を投じて消耗し、子どもがその影響を大きく受けて、貧困に陥ったりするのです。
この親権の問題は、日本では子どもが成人する20歳までの問題です。逆に言えば、20歳までは、自分たちの意思で結婚し子どもを作った親としての責任を感じ、子どもが成人するまでは我慢するというのが、日本だけではなく世界の親が行うべきことだと私は思います。
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