両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和3年5月6日、Benesse たまひよ

離婚しても一緒に子育て?「共同養育」は子どもの成長にもプラス

パートナーとの離婚を考えたことがありますか?日本の離婚率は35%前後、3組に1組が離婚している現状です。今は幸せでも、ちょっとした気持ちのすれ違いはどの夫婦にも起こりうるもの。でも離婚して子どもを1人で育てるのも心配…。共同養育実践に向けたサポートをする一般社団法人「りむすび」の代表しばはし聡子さんに、離婚後の子育てについて話を聞きました。

別居・離婚をしても子どもが両親の愛情を感じられることが大事

――平成28年度の調査(※1)によると、母子家庭になった(死別以外)ときの一番下の子どもの年齢は、0~2才のときが39.6%と最も多く、出産後から幼児期の親が離婚の危機を迎えやすいようです。離婚は、子どもが小さいうちにはどんな影響があるでしょうか。

しばはしさん(以下敬称略) 産後クライシスやワンオペ育児など、育児に大変な時期はお互いに余裕がなく、夫婦の気持ちのすれ違いから離婚を考えてしまうこともあるでしょう。
0〜2才くらいの小さい子は、パパとママがけんかするなどの夫婦仲の悪さは、不安として五感で受け取ります。3才〜未就学児くらいになると、離婚という言葉もわかりはじめてくる。ママやパパに会えなくなると「自分が悪い子だから離婚しちゃったんだ」と自分を責めてしまう子もいます。だけど、いちばん近くにいるはずの親に、不安な気持ちを話せず、小さな胸を痛めているかもしれません。

――小さな子どもがいる親が離婚を考えるとき、どのようなかかわりを考えればいいでしょうか。

しばはし 離婚は、子どもにとっては必ずダメージになります。それ以上に傷つけないためには、子どもの環境を変えないこと、子どもから親を奪わないことが大事です。
つまり、離婚をして別居しても、きちんと親子が会う時間を作り、親同士として子育てにかかわること。元パートナーの話題をタブーにしないこと。子どもが親の顔色をうかがわずに、なんでも聞ける、話せる状態にしておくことが必要です。このように、離婚をしても親同士として子育てにかかわることを「共同養育」といいます。

離婚後に子どもに会えない人は7割。共同養育は子どもの成長にもプラスに

――日本では離婚したら「ひとり親」というイメージが強い気がします。

しばはし 日本では、離婚後は父母どちらかが親権を持つ単独親権であり、子と離れて暮らす親が交流する「面会交流」の実施率は約3割。離婚後に親に会えない子どもは7割もいます。養育費の不払いやひとり親家庭の貧困も社会問題になっています。

一方、欧米諸国の多くは「共同親権」で離婚後も両親がともに子育てすることが珍しくありません。面会交流やカウンセリングなどの公的な支援機関もあります。離婚後も両親が子どもとかかわることは当然のことであり、子どもは両親からの愛情を受けることで、心身ともに健康に育つとの考え方です。

――「共同養育」するとなると、どのくらいの頻度で交流するのですか?

しばはし 面会交流の頻度は、家族の形態や子どもの年齢によりさまざまです。一般的に裁判所で決められる面会交流は、月1回、2〜3時間が相場ですが、とても少ないですよね。実際に共同養育している例では、平日は同居親と一緒に過ごし、休日は別居親と過ごすパターンが多いですが、曜日交代、1週間交代といったケースなどもあります。
遠方に住んでいる場合は直接会う頻度は減りますが、オンラインでの交流を取り入れるなど多岐に亘ります。

子どもの立場で、親同士としてかかわり続けることが大事

――とはいえ、離婚したいと思う相手と、親同士としてかかわろうと気持ちを切り替えることも難しい気がします。

しばはし そうですよね。私自身も6年前に離婚を経験しましたが、1年間ほどは「子どもを父親に会わせたくない」と後ろ向きな気持ちでいました。元夫から届くメールも自分を責めている気がして、怖くて見られないことも。けれど、そのうち子どもが精神的に不安定になってしまい、その後悔から元夫と前向きにかかわるように。私から元夫に連絡してみたら、みるみる関係がよくなり、子どもの表情も明るくなったんです。

夫婦が別れても「親子」は続きます。自分にとっては嫌いなパートナーでも、子どもにとっては大事な親。離婚を考えるなら、まず子どもの実母・実父はずっと1人だ、ということを知ってほしいです。
相手と縁を切りたいという感情だけで離婚に臨むと、関係が悪化してもめてしまいがち。ですが、共同養育者としてかかわることを前提に離婚を考えるのであれば、円満にとはならずとも、争わずに済むと思います。
もちろん原則として、元パートナーが子どもに暴力や危害を与える可能性がある場合は、先に適切な対応が必要です。

――両親が争っていなければ、子どもへの負担も少なくなるのでしょうか。

しばはし 離れて暮らしていても、両親が争わずに共同養育ができると、子どもは両親の愛情を感じ、自分を責めずに済みます。お友だちにも別居している親の話ができるし、別居している親が保育園行事にも参加すれば「自分にはパパ(ママ)がいない」と悲しい思いをしなくて済みますよね。

子どもの年齢に関係なく、離婚しても親は2人、ということを多くの人に知っておいてほしいと思います。

――共同養育が広まることでひとり親家庭の貧困などにも影響すると考えられますか?

しばはし 現状として、母子家庭で養育費を「継続して受けている」人の割合は24.3%で、平均月額は4万3707円(※1)、ひとり親世帯の貧困率は50%を超えています(※2)。シングルマザーの場合は、元夫と共同養育して親同士の育児分担ができれば、仕事をして収入を上げる機会も増えるでしょう。
また、元夫側も子どもとの交流が増えることで、養育費を支払うモチベーションにもつながります。
離婚はしないに越したことはありませんが、もし離婚するなら、子どもを中心に考え、親同士で分担して育てるほうが、子どもにも親にも社会的にもメリットが大きいと思います。

お話・監修/しばはし聡子さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

パートナーとの関係がうまくいかないとき、感情のままに離婚に踏み切ってしまう前に、一度立ち止まって考えてみましょう。子どもの気持ちや将来などを踏まえ、パートナーと協力して子育てすることが、家族の幸せにつながるのかもしれません。

(※1)厚生労働省 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000190327.pdf

(※2)厚生労働省 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28_rev2.pdf

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