両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和3年2月21日、京都新聞

社説:民法の親子 見直しに弱い立場の声を

 連続テレビ小説「おちょやん」は先週、親と子がテーマだった。子にとって親とは、親にとって子とは。

 さて、いま法律上の親子をめぐる議論が始まっている。

 後を絶たない親による体罰、虐待、離婚後の子をめぐる親権争い、養育費の不払い、母子家庭にみられる子どもの貧困、無戸籍の子…。

 社会が向き合い解決すべき問題だが、壁にぶつかることがある。明治期から続く民法の家族規定が、現代に合っていないからだ。

 法律の不備が、子や親の幸福への道を阻んでいないか。

 ようやく、動きが出てきた。上川陽子法相は今月10日、離婚後の「共同親権」や養育費不払い問題を視野に、家族法制の見直しを法制審議会に諮問した。

 その前日、別の法制審議会の部会が、子の父を決める民法の「嫡出推定」を見直し、無戸籍解消の道を開く中間試案をまとめた。試案では、しつけと称する虐待にも目を向け、民法が認める親の「懲戒権」の是非や、体罰禁止の明文化も検討するとした。

 国連で1989年に採択された「子どもの権利条約」を、日本は94年に批准している。しかし、日本の改善は遅く、国連から親の「懲戒権」や、子どもに親の選択を強いる「単独親権」を見直すよう勧告されている。

 欧米では、離婚した男女が「共同親権」を持ち、同じように子の養育に責任を負う。国際結婚で、親権のない親が海外に子を連れ出す事件が相次いだことから、欧州連合(EU)議会が「共同親権への変更」を日本に求める決議をしている。

 一昨年中に離婚した夫婦は、20万組超にもなる。親のトラブルで、子どもたちの未来を暗くしてはいけない。

 親権者の80%超が母親だ。母子家庭となり、養育費を受け取っているのはわずか24%、貧困率は50%近くにもなる。子どもの健やかな成長のために、急いで民法を見直し、養育費請求権を明記する必要がある。

 子どもが会いたくても、面会を取り決めているのは母子家庭で30%のみ。暴力を振るう前夫から逃れるため、生まれた子を届けられずに無戸籍に。子への暴力を「懲戒権」で正当化する―さまざまな事情があるだろうが、振り回され傷つくのは子どもたちだ。

 「いやだったことは、どちらと住むかを選ばされたこと」。民間団体が集めた、親が離婚した子どもたちの声だ。「親に心配かけないように、いい子を演じてきました」

 子どもの権利条約は児童の「意見表明権」(12条)をうたっている。条約の児童とは18歳未満とされ、年齢や成熟度に相応して、行政上の手続きでも聴取される機会が与えられるとしている。

 民法の見直しという難しい議論だが、専門家や大人の意見だけでなく、子どもたちの声にも耳を傾けてもらいたい。

 子どもを守り、育てるのは、親の深い愛だが、地域や社会も子どもたちの成長を見守ることが大切だ。親子をめぐる議論は法律にとどまらない。

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