両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和2年3月27日、土井法律事務所ブログ

全ての子どもにまつわる事件の当事者の親御さんたちは、最高裁判所の動画を武器にしっかりと身に着けるべき 最高裁は私たちの味方だ!

最高裁判所が動画を配信しています。
https://www.courts.go.jp/links/video/hanashiai_video/index_woc.html

ビデオ「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」という動画があり「基本説明編」と「子どもの年代別説明編」の2本が配信されています。

子どもと言っても発育段階によって感じ方に違いがありますので、年代別説明編を作ったことはとても配慮されていると思います。
基本説明編では未就学児と小学校高学年を例に模擬事件を作ってわかりやすい説明がなされています。これはとても使えます。

面会交流調停だけでなく、親権者の指定(離婚調停、訴訟)、変更、監護者の指定、子の引き渡し全ての事件で、この動画を裏付け資料として主張を行うべきなので、内容を紹介します。

基本説明編の内容としては、大きく分けて二つの構成で、<子どもが両親の争いから受ける影響>とそれを踏まえて<子どもを両親の争いに巻き込まないために>が述べられています。

全体の章立ては、
1. 話し合いを行うときに
2. 子どもが両親の争いから受ける影響
3. 子どもを両親の争いに巻き込まないために
4. 自分自身の心の状態を知る
5. 子どもへの接し方
6. 話し合う内容と心がけること
となっており、最初の画面からその動画部分に飛べるようです。
この点もよくできています。

先ず、<子どもが両親の争いから受ける影響>が述べられています。文字ではなく動画で、しかも子役がみな素晴らしい演技をしているのでこれでもかというほどわかりやすくなっています。

10歳の子どもの場合は、一見平気そうに見えても、内面では悲しい気持ち、辛い気持ち、不満などを抱えていることがあるというようなことを説明しています。

よく調停などで、子どもは平気そうにしているから今の環境になじんでいるとか別居親と会わなくても良いから会わせないとか等と言う当事者がいるわけですが、その言い回しは間違っているということの裏付けとして使えるわけです。

まさかとは思いますけれど調査官調査報告書がこのようなトーンで書かれていたら最高裁の見解に反するという言い回しも可能になるでしょう。

もし万が一、審判でこのような能天気な理由付けがなされていたら抗告理由に私は使わせていただきます。

ビデオの内容の説明を続けます。

小学校高学年になるとどちらの親の気持ちもわかるためどちらにも気を使って板挟みになり辛い気持ちになっているということも説明されています。

そして、板挟みになることを避けるためにどちらか一方の親の肩を持つような極端な言動をすることがあるとまではっきり説明しているのです。

子どもは親に気を使うわけです。それにも関わらず、子どもの言葉を表面的にとらえて能天気な、つまり、ものを考えない結論を出してはならないと最高裁判所は考えているわけです。

また、動画は良い子にしていると両親が仲直りするのではないかと無理をして良い子にふるまうことがあるということを指摘しています。

これはよく見られる現象で勉強を頑張ったり、習い事を頑張ったり無理をする子どもたちを学校現場でもたくさん見ているそうです。

小学校低学年までは自発的に無理をする子はほかにあまりいないため無理をすればするほど成績は上がります。しかし、小学校高学年から中学年にかけてになると無理して頑張るだけでは成績はついてきません。自分にかかる歪んだ期待の大きさと、成績という現実とのギャップに子どもは苦しみます。

学校や習い事の成績がいつしか子どもにとっては自分をささえる唯一の道具になっていますから成績が頭打ちすることは精神的な打撃になるようです。

自分が無理をしないでありのままにいても尊重されるべきだという発想は、子どもには持てません。保健室登校や不登校につながる事例があるようです。

まさかとは思いますが、調査官調査や審判書などで子どもがテストでよい点数を取っているから子どもに問題が起きていないなんてことは言わないと思いますが、もし、万が一そのようなことがあれば最高裁の考え方とは全く違うということを教えてあげなければなりません。

次の大きなまとまりは<子どもを両親の争いに巻き込まないために>ですポイントとしては「心の状態を知る」「子どもへの接し方」「話し合う内容と心がけること」が挙げられています

心の状態を知るとは、親自身が自分の心の状態を知るべきだということなのだそうです。離婚の問題はこれまでになかった強いストレスを受けるので、相手の言動を実際よりも悪くとらえてしまうときちんと説明されています。

これは、とても基本的なことなのですが、これまで家裁実務では、あまり取り上げられてきませんでした。

当事者が感じたことを、すべて事実だというような扱いがされることがたびたびありました。裏付けもないのに暴力があった等と言う認定はないと信じたいのですが、それに似たようなことはたくさん目にしています。事実でないことで不利な決定を受けた方は防ぎようのない攻撃を受けることになります。
ビデオでは悲嘆反応にまで言及しています。

次は子どもへの接し方です。

子どもに親の争いを見せないということが一番に出てきます。これはとても大切なことです。これは同居時に子どもの前で喧嘩しないということが勿論一番ですが、別居した後でも、子どもの前で、相手の悪口を言うとか、別居してよかったとかそういう話をするということも同じだと思います。

昔は、親の親、子どもから見れば祖父母は相手の悪口を子どもの前で言うことを良しとしない風潮がありましたが、今の祖父母は、子どもの前で平気でその子どもの血を分けた親の悪口を言っているという嘆かわしい世の中に日本はなっているようです。

嘘でも良いから相手の良いところだけを子どもには知らせるべきでそれをする能力がないならせめて悪口を言わないということをするべきです。

子どもの心に目をくばり、逆に子どもに悩みの相談に乗ってもらってはいけないということが言われています。

また、一方の親に気を使って一方の親が悪くない、相手が悪い等と子どもが言ったらそれをやめさせるべきであることが情感豊かに描かれています。

これからの生活の見通しを述べることが子どもの気持ちの安定のためには有効であることが述べられています。
そうであるならば子どもに何らの説明もしないで転校を余儀なくする引っ越しを突然することはこの観点からも子どもの心に負担が生じることだということが導かれます。

子の福祉にとって有害なことのカタログのようなビデオです。大いに活用できると思います。もっとも、相手を攻撃するために使うのではなく自戒のためのビデオなので念のため。最後は話し合う内容と心がけることについてです。子どものために何を話し、何を決めるのかということをまず考えなくてはならないと言っています。

ところが、家庭裁判所では、子どもの利益があまり話題にならないように感じています。親同士が、私は私はということで争っていることが多いのではないでしょうか。

子どもという一つの人格が無視されているということに警鐘を鳴らす内容となっています。

離婚となった場合は、当然に面会交流をするという流れにもなっています。これは全て子どもの利益であり、親ならば最優先しなければならないとビデオは訴えているように思われます。

ところが、地方の裁判所では、まだまだ面会交流を当然行うべきだという流れにはならず、同居親の葛藤が高ければ実施できないとか間接面会交流にしなさいと言ってきたりするところもあります。最高裁の考え方とまるっきり違うわけです。

また、間接面会交流の意味ですが子どもが読むことすら見通しがないにもかかわらずに別居親が一方的に手紙などを出してそれで終わりという無責任な方法を面会交流だと勘違いしている関係者も多くいます。交流ですらないと思います。

ビデオでは、面会交流は、離れて暮らす親も自分に愛情を注いでくれると実感することが子どもにとって大切だと言っています。

届かない手紙を出すことは面会交流とは言いません。子どもが読まないから仕方がない等と言う人もいますが、子どもは気を使って読まないのです。
養育費についても子どもが愛情を実感するという利益があることを述べています。

最後に子どもの「将来のために」何が必要かという視点が必要だと力説している要に私は感じました。

大事なことは、子どもの場合今だけでなく子どもは成長する存在であり、それに応じた配慮が必要だと説得的に述べています。

家庭裁判所の話し合いも当然にその視点で行わなければならないはずです。

年代別の動画も基本的には今述べてきた内容を子どもの年齢に応じた発達段階に合わせて丁寧に解説されています。ポイントと対応方法をきちんと整理してわかりやすいです。またどの子役の方々も演技が素晴らしい。

ご自分のお子さんの年齢の部分は私がこのブログで抜き書きしたように抜き書きして手元に置いて調停に臨むべきです。

家事調停は、事件ごとにいろいろな顔があります。必ずしも法律で画一的に調停の流れを決めることはできません。それはそうでしょう。

しかし、現実の家事調停の多くが、何らよるべき基準を設けず、調停委員や、裁判官、調査官の個人的考えに従ってフリーハンドで行われているのではないかという危機感があります。

最大の問題は子どもの将来が全く考えられていないということです。

家裁月報や「子どものための法律と実務」安倍嘉人、西岡清一郎監修(日本加除出版社)等、勉強する文献はたくさんありますが、その成果がコンセンサスになっていないのではないかと感じてなりません。

今回おそらく建前としては一般国民を対象として最高裁は動画配信を行ったのでしょう。しかし、一般国民に向けてこのような内容の動画を作るということは、ほかならぬ裁判所は、この動画と同じ考えで、家裁の手続きを行うということを宣言したに等しいと考えるべきだと思います。

全ての子どもの事件の当事者の皆さんが、この動画をよく観て、内容を自分のものにするべきです。

もし家庭裁判所がこの動画に反する行動をとったならば動画の内容を教えるべきだと思います。そして動画を見ることを提案してください。

この先、長い目で見れば子どもの権利はますます拡充していくことと思います。そうなれば、この動画でも不十分な点が感じられるかもしれません。

しかし、現時点においてはこれは強力な武器です。それだけこの動画とは異なる考えで実務は動いてしまっているということです。

おそらく最高裁の真意は一般国民に向けてというよりも家事実務の在り方に対して動画という形であるべき形を示したのではないかと考えたくなっている次第です。

いずれも、このような動画は、最高裁判所が配信しているものです。最高裁判所は私たちの味方だということに確信を持つべきだと思います。

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