両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

寄稿SeasonⅠ⑧

寄稿Season Ⅰ ⑧向き合う

Saraさん(愛知県の元シングルマザー、60代)
聞き手・Masaくん(気弱なジャーナリスト)

Masaくん 元夫の暴力で家族3人にトラウマ(心的外傷)が残ったそうですね。
Saraさん 勤め先の会社の経営が傾いたのをきっかけに、元夫の暴力が始まりました。ストレスのはけ口としてギャンブルやアルコールに走り、パチンコで大負けしては、酒に酔っ払ってはの繰り返しでした。ただただ元夫のことが怖く、今でも男性の怒鳴り声を聞くと体が震え、心臓がバクバクします。DVは3年ほど続いたでしょうか。娘が短大生、息子が中学生の時に2人を連れ、実家に逃げ込みました。最も深くトラウマを負ったのは、娘だと思います。元夫に髪をつかまれて引きずられたこともありました。それでもそんな過去に負けず、今は結婚して家庭を持って元気に暮らしています。
Masaくん 父と同じ男性である息子さんはどうですか。
Saraさん 息子もどうしていいか分からず、パニックになっていた時期がありました。ただ私たちと少し考えている事が違っているみたいで、本人は「僕はまたお父さんに会いたい」と口にすることもありました。しかし私寄りだった姉に「お前なんか弟じゃない」と腹を立てられ、本人は苦労していたと思います。それから何とか大学を出たものの、仕事の対人関係などに苦労していたようで精神的に不安定でした。仕事を休んで引きこもっていた時期もありました。ある時を境に前向きになったと思います。利用者として通った就労移行支援事業所の女性経営者の励ましと、自分と同じ境遇の主人公を描いた映画を観たことがきっかけだったみたいです。いつの間にか私に内緒で元夫に手紙を送って交流していました。やはり、子は親を思慕するのですね。今では私と元夫それぞれの気持ちを分かろうとしてくれています。
Masaくん 元夫に対して何とかしようと取り組んだ事は。
Saraさん 精神的に病んでいるようにも見えたので、本人に「病院へ行こう」とも言ったのですが、聞き入れてくれませんでした。医療機関を受診するか、何らかの更生プログラムを受け入れていれば、少しは何とかなったかもしれませんが、正直分かりません。あの頃は夜に帰宅すると暴力を振るい、朝になると謝罪する、そんな毎日の繰り返しでした。ただ会いに行っている息子からの話を聞くと、私の知らない苦しさとも向き合っていて、本人なりに頑張ろうとした部分もあったのかもと、少しずつですが気づきました。その時、違った言葉かけができていたら、もしかしたら別の展開もあったかもしれないとも感じます。いずれにしても子供たちには反面教師となったはずです。
Masaくん つらい記憶ばかりでしょうが、元夫に対し今はどんな感情を抱いていますか?
Saraさん 今は遠くにいて元気であれば…そう思うだけです。時間が経ち、息子が私に代わってやりとりしてくれていることもあって、トラウマはずいぶんと和らいでいます。

Season1-8

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更新 2021-11-29 (月) 08:29:55
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