両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和2年9月29日、テレビ新広島

揺らぐ”親権制度” 届かなかったSOS 娘を失った男性の思い

特集は子どもの「親権問題」について考えます。日本では夫婦が離婚した場合、片方の親を「親権者」として定める「単独親権制度」をとっていて、実は近年、離婚後に我が子に会えなくなり、悩みを抱える親が急増しています。「親権制度」に翻弄される1人の男性を取材しました。

江邑幸一さん、47歳。江邑さんには月に1度、必ず訪れる場所があります。そこに眠っているのは、16歳の若さで亡くなった長女の寛世さん。6年前、自ら命を絶ちました。

【江邑さん】
「いつもここでこうやって。ごめんなさいということで」

江邑さんは2006年に元妻との間で離婚が成立。娘2人の「親権」を失い、当時、寛世さんとは離れて暮らしていました。

【江邑さん】
「『ゴメンね』しかないですね。『ゴメンね』というのと。助けることができなかった」

深く刻まれた「後悔」と「自責」の念。江邑さんには、当時も今も「親権」の壁が立ちはだかっています。離れて暮らすようになってから、寛世さんの身に何が起きていたのか? 娘が死にいたった経緯について、語ってくれました。

【江邑さん】
「お父さん子のままで行ったので、お母さんの言うことをまず聞かない。だんだん会話もしなくなり、そういうささいなことが年月を重ねることで追い込まれていったと思う」

次第に家庭内でも孤立していったという寛世さん。中学生になる頃には児童相談所の支援を受け、児童養護施設で暮らすようになっていました。

【江邑さん】
「面会交流で月1回と決まっていたので、月1回で会ってました。その時は全然、普通の親子喧嘩というか。児相に引き取られたくらいにしか思ってなかった」

この時、江邑さんは、娘を引き取るため「親権変更」の調停を申し立てましたが、一度、失った「親権」を取り戻すことはできませんでした。

【江邑さん】
「親子関係が崩れている証拠だし、私の方に変えてくださいとしましたけど、調停員は児相で元気にしてますよと。変える必要はありませんと言われました。何で子供の意見を聞いてくれないんだろうと」

その後も母親との関係は悪化。一時保護や里親の下での暮らしを余儀なくされた寛世さんは、当時の苦しい胸の内を日記に記していました。

【日記吹き替え】
「こっちはたぶん期待してたんだ。誰かが家に帰らなくてもいい何かを提案してくれることを。信じてたのに」
【日記吹き替え】
「私は親との摩擦に心底、疲れました。もう消えてしまいたい。」

寛世さんから確かに発せられていたSOS。しかし、その情報が親権のない江邑さんのもとへ届くことはありませんでした。そして、2014年児童相談所は親元へ戻す「家庭引き取り」を決定し、寛世さんはその2ヵ月後、帰らぬ人となりました。

【江邑さん】
「まさかね…亡くなるとは…。一番は何でそうしたのとは思いますけど、逃げたかったところを逃がしてあげられなかった。子供がコチラに来るようにいろんなことを考えてできなかったかなとか」

死の2カ月後、娘の生前の記録や死の原因を知るため、児童相談所を訪ねた江邑さんでしたが…

【江邑さん】
「児相として「やることはやりました」と。「お父さんには親権がないのでそれ以上は教えられません」と。」

さらに児童相談所を所管する山口県にも情報公開を求めましたが、ここでも寛世さんの個人情報に対する「相続権」がないことなどを理由に却下され、かろうじて公開された文書は、重要な部分がほとんど黒く塗り潰されていました。悩んだ末に江邑さんは、今年3月、原因の究明などを求めて広島地裁への提訴に踏み切りました。

【江邑さん】
「事実を知りたい。子供がどうやって、どういう判断でどういう対応をされて、亡くなっていったのか。二番目は名誉回復は必ずしたい。原因が子供じゃないと。それだけを言って欲しいだけなんだと自分では思ってます」

ある日、江邑さんが訪れたのは、福山市で開かれた「交流会」。参加者はみな、離婚後に「親権」を失い、子どもとの面会が思うようにできなくなった親たちです。

【参加者】
「1年経った後に元の奥さんが再婚したんですね。再婚してそれで会わないでくれと」
【参加者】
「子供が生まれてすぐに連れ去られて全く会わせないという風に向こうがした。私と子供の時間はもう帰ってこないしなぜ何も悪いことをしていない私と子供がこのように引き離されないといけないのか」

【江邑さん】
「親権がなければ何もない。死んだ後でもこんなに冷たい仕打ち。悔しくて悔しくて」

司法統計によると、2018年度に申し立てられた子どもの「面会交流」に関する調停の数はおよそ1万3千件にのぼり、20年前の5倍以上に増加。そのため国は現在、離婚後も両親が子供の養育に関わっていく「共同親権」の導入について、研究会を立ち上げて議論を進めています。

【江邑さん】
「自由に子供が自分の意志で行ったり来たりできれば、共同親権があればこの子は助かってましたとそれは確実に言えることだと私は思っています」

2019年度の婚姻件数は約59万件。離婚件数は約21万件。夫婦の3組に1組が離婚するといわれる時代、「親権問題」は誰の身にも起こりえます。

(スタジオ)
VTRにも出てきた離婚後も両親が親権を持つ「共同親権」ですが、実は欧米諸国では主流の考え方となっています。一方、国内ではこの「共同親権」の導入には慎重な意見もあり、特に家庭内暴力などを背景に離婚した場合の安全対策などに強い懸念が示されています。

まだまだ議論は必要ですが、江邑さんと寛世さんのような悲劇を繰り返さないためにも、いま一度、子どもの視点に立ち返って、制度を見直していく必要があるのではないでしょうか。

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