両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成28年11月22日、iプロデュース ブログ

家庭裁判所の皆様への提言:フレンドリー・ペアレントルール採用がもたらす家裁実務への影響

松戸家裁の事件(控訴審)がフレンドリー・ペアレントルールの採用の可否を巡り注目を集めています。しかし、年間1万件を超える子を巡る家事事件において、現在最も重視されているのは継続性の原理です。家裁の裁判官や調査官・調停委員の皆様は十分にご自覚のあるものと推察しますが、結局、この類の事件は面倒なので、「現状維持」を基本として、特別な事情がなければ監護者は変更せず、面会交流は月に2回程度で双方に納得させる、という暗黙のルールがあるようです。これを仮に「事件処理簡便性の原理」と呼ぶならば、フレンドリー・ペアレントルールはその趣旨の他、裁判官らに十分な利益をもたらすことが期待できます。
フレンドリー・ペアレントルールは、本来、子が親との十分な面会交流・養育を確保するために、養育計画等によって別居する親に高頻度の面会交流を確約するものにこそ監護者・親権者としての適格を認めるというものです。
子の意思を汲むならば、父母の葛藤を下げ、関係修復と同居の再開、そして父母と一緒に安心して愛情を受けて生活することができるよう全力を注がなければなりません。しかしながら、その願いが叶わないとしても、いつまでも父母の葛藤が継続したり、別居後も同居親が別居親の非難を口にしたり、不安定になったり、その結果面会交流がなされなかったり、という影響を受けないような配慮が必要です。
現在の監護者指定・変更の審判では、上記、事件処理簡便性の原理が根拠となっているため、現状の監護に問題がなければ別居親の監護状況すら調査せずに審判を下すことも認められます。そのため、別居親は監護親の監護能力が低く、適格が「全くない」と認めさせることができなければ審判で勝つ見込みがなく、それ故、自称「人権派」弁護士に連れ去りと引き離しを教唆される事態になっています。
近年の家事事件の増加を見れば家庭裁判所の裁判官にも理解していただけると思いますが、裁判官の能力査定の一つである事件処理数は、事件処理簡便性の原理に従っているだけではマクロ的な増加を止めることができません。1人の裁判官が仮に担当事件数を減らしても、家庭裁判所全体で見れば、事件処理数を上回る事件の申立のために、裁判官ら全体の能力不足を問わねばならない事態となっています。
これまで、子の福祉に関して相当数の意見書を作成し、その都度、面会交流がなぜ月に2回というのが子の福祉に適うのか、相手方あるいは裁判官に求釈明を続けてまいりましたが、ただの一度も合理的な根拠を示されたことはありませんでした。別居親は、それで納得できるはずがありません。自らの幸福追求権を司法によって奪われたと認識し、一部は子の福祉よりも同居親のご機嫌を取るために子に対して申し訳ない思いを抱きながら審判に従い、一部は司法改革や利権構造の解体を目指し立ち上がり、一部は絶望して自死を選び、残りの多数は抗告したり時期を待ち再度の申立を行います。
これまで司法によってDV加害者とされ子と引き離された多くの人が自らの命を絶っています。本当にDV加害者ならば自死ではなく被害者を殺害すると考えるのが妥当ですが、そうではないという事実は、DV加害者と呼ばれた人たちの多くは、親子断絶防止法反対派の人たちがオーバージェネラリゼーション(過度な一般化)する暴力的で支配的で衝動的な一部の人とは一線を画していることを物語っています。
子にとって父母の葛藤を下げることが福祉に適うと考えるのに対し、司法の事件処理簡便性の原理は、葛藤を良しとしない別居親であっても同居親を攻撃せざるを得ない状況を作り出すものであることは明白です。子の福祉に関して父母で穏便に相談しようとしても連れ去りにあい、弁護士を通さなければ相談できない状況となり、その「人権派」弁護士からの非難を共感的に傾聴したのでは、子の福祉を実現することはできず、どうしても反論し、さらに連れ去り親の非を証明するための攻撃が必要不可欠な状況にならざるを得ません。これは現行の離婚制度と監護者指定における司法の怠慢が招いた結果であり、子の福祉を害した責任の一端を司法が持つと考えるべきです。
家裁実務において、フレンドリー・ペアレントルールが採用されれば、別居親が同居親を攻撃する必要性がなくなり、「相手がダメだからこっちに寄こせ」ではなく、「こちらにいた方が子の福祉に適う」というポジティブな側面の主張をメインにすることができます。その結果、これまで、調停や審判が始まってからさらに高まっていた葛藤を下げる効果が期待できます。自分は相手に感謝できる人格を有していること、これまで非があったら謝罪する人格を有していることは、本来評価すべき監護者適格のはずです。これはフレンドリー・ペアレントルールを第一基準とすることによってのみ実現可能です。
フレンドリー・ペアレントルールは、初めに述べたように子の面会交流を確保し、直接的に親子の交流を図るというのが第一趣旨ではありますが、その実現によって父母の争いにおける不要な葛藤の高まりを予防し、かつそれを下げる効果すら期待できるものであり、恨みとその報復によって生じている審判申し立ての増加を抑制する方向に動くはずです。そしてこれこそ、ミクロ的にもそしてマクロ的にも家事審判における事件の解決に寄与するのですから、家庭裁判所が事件処理簡便性の原理を重視する場合においても相反しない原理となると言えます。
親子断絶防止法は、一部の真正DV加害者や面前DV加害者にまで直接的な面会交流を義務付けるものではありません。父母が離婚しても親子の交流こそ重要である、という理念を明確にする原則法です。この法案によって、フレンドリー・ペアレントルールが家事審判の根拠となるよう期待しています。

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