両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成28年1月26日、産経新聞2

「妻の暴力が怖い…」増える男性のDV被害 プライド邪魔して相談できず

 配偶者や恋人から暴力を振るわれるドメスティックバイオレンス(DV)。「被害者は女性」というイメージがあるが、男性が被害を受けているケースが増えている。「男らしさ」というプライドから周囲に相談できず、1人で抱え込んでしまうことも。支援窓口を増やすことが喫緊の課題だ。(中井なつみ、油原聡子)

 ■家にいられない夫

 「家にいるのが怖くてたまらない」。東京都内に住む30代の男性会社員は2年前に妻と別居した。妻からの日常的な暴力が原因だった。殴られたり、蹴られたり。「リモコンを置く位置が違う」「すぐに返事をしない」。きっかけはそんなささいなことだ。しかし、妻は一度怒り出すと感情が抑えられず、男性が出血するまで暴力をふるった。

 妻と極力顔を合わせないように、就業後は終電近くまで漫画喫茶で時間をつぶした。妻が寝静まったのを見計らって帰宅。自分の寝室の扉の前に机を置き、妻が入れないようバリケードを作った。「そうしないと、寝付けなかった」

 離婚を切り出したが、妻は拒否。逆に、家庭の状況を「会社にばらすぞ」と脅された。仕事にも集中できなくなり、悩んだ末、弁護士に相談した。最初の暴力から3年がたっていた。

 別の都内の30代の男性は、妻の言葉の暴力に悩む。男性は高卒で、一流大卒の妻から学歴をののしられる日々にじっと耐え続けている。妻の口癖は「これだから高卒は…」。男性は「俺はダメなんだ」と思い悩み、離婚も考えたが、子供はまだ2歳。「妻に引き取られる可能性もあるので一歩が踏み出せない」

 ■「男としての立場」

 警察庁の統計によると、DV被害相談件数は年々増加し、平成26年には過去最多の約6万件。うち男性の被害は約6千件(10・1%)で22年の約800件(2・4%)から7・5倍に激増している。

 「家庭内のトラブルを外には知られたくない。そんな理由から多くの男性が、『助けて』と声を上げられない状態が目立っている」

 こう指摘するのは、DV被害男性らの相談を受ける森法律事務所(東京都中央区)の森公任(こうにん)弁護士。被害男性に目立つのは「職場や親族に知られれば男としての立場がなくなる」という意識だ。周囲にも性差に基づく固定観念が強く、男性側が被害を訴えても「そんなはずはない」と信用されない場合も珍しくないという。

 日常的に暴力を受け家庭生活が破綻しても、幼児がいる場合などは離婚にも消極的。「『親権を妻が持つことになるかもしれない』という不安がある。離婚を望む場合、何よりも必要なのは被害を立証できるもの」と森弁護士

 離婚をめぐる裁判では、妻に暴力をふるわれ、負傷した際の診断書や、現場の写真や音源など客観的な証拠が重視される。

 ■シェルターもなし

 男性被害者に向けた支援の充実も課題だ。女性向けの相談窓口は数多く開設されているが、男性向けは数も少なく、あまり知られていない。また、男性用の「避難用シェルター」はほとんどないのが実情だ。

 東京都が運営する男女平等参画社会の啓発活動を行う「東京ウィメンズプラザ」(渋谷区)は、13年から男性向けの夜間の電話相談を開設している。しかし、担当者は「相談に乗ることができるが、『シェルターを紹介してほしい』と言われても、男性を対象にした施設は少ない」と実情を語る。

 夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美さんは「本来、家は世界で一番安全な場所であるはず。家庭のなかのことは、被害者が声を上げなければ助けることはできない。男性も被害を訴えてほしい」と話している。

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