両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成27年12月12日、日本経済新聞2

娘に会いたい 私は父 親権巡る争い絶えず

 北海道の短い夏。40代の男性は8月、5年ぶりに娘と再会した。「昔、おじさんと一緒に住んでいたんだよ」。6歳になった娘に父親とは名乗れなかった。昨年、最高裁判決で「父親」だと認められたというのに。

法律上は親でも

 裁判の経緯はこうだ。男性の元妻が別の男性の子を身ごもり、生まれたのが娘だった。謝罪する元妻を受け入れ、娘を1歳2カ月まで育てた。しかし元妻は娘を連れて去り、やがて離婚。その後、DNA鑑定をもとに「男性と娘に親子関係がない」ことを確認する裁判が起こされた。

 元妻は娘の「血縁上の父」と再婚。娘は血縁上の父の養女になる手続きが取られていた。

 男性は「血縁関係はなくても自分の娘だ」と争い、最高裁は昨年7月、「いったん定まった親子関係をDNA鑑定で取り消すことはできない」との初判断を出し、男性を父親と認めた。

 だが最高裁判決後、家裁では娘の親権変更は認められなかった。「連れ去りや養子縁組など既成事実を作ったほうが勝ちなのか」。怒りとやりきれなさを募らせる。

 年間の離婚数は約22万組。民法は離婚後の「共同親権」を認めておらず、子供の親権や面会交流をめぐり、申し立てられる家裁の調停・審判件数も年間5万件を超える。早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「夫婦別姓や女性の再婚禁止期間の是非以外でも、家族のあり方と民法との乖離(かいり)が広がっている」と指摘する。

 「私がただ一人の親なのに、娘が元気なのかどうかも分からない」。10月、米国籍のポール・トーランドさん(48)は記者会見で訴えた。日本人の元妻が連れ去った娘(13)の養育権と引き渡しを求め、東京家裁に審判を申し立てたのだ。

拒まれた交流

 日本に住んでいた2003年に元妻が娘を連れて家出。離婚が成立し、親権は元妻が持ったが、07年に亡くなった。元妻の母が娘の後見人になり、トーランドさんと娘の面会交流を拒んだ。

 トーランドさんは「第三者(元妻の母)が実父より優先されるなら、普通の国と異なる」と日本の法制度を批判する。

 日本は昨年4月にハーグ条約に加盟し、一方の親が子供を無断で国外に連れ去った場合、原則として元の居住国に戻すことになった。トーランドさんの事案は加盟前のうえ、国境もまたいでいないため対象外だ。

 代理人の上野晃弁護士は「親が子供を連れて去ってしまうことで、もう片方の親がわが子に会えなくなる問題は日本人同士でも多発している」と警鐘を鳴らす。海外では一般的な共同親権を日本の民法が原則認めず、面会交流に強制力がないことも一因だ。

 国連の女性差別撤廃委員会は夫婦同姓や女性の再婚禁止期間をめぐり、度重なる是正勧告を出してきた。棚村教授は「民法は本来、社会の変化に合わせて柔軟に変えていくべきもの。できなければ法への信頼が揺らぐ」と指摘する。

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