両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

平成26年6月18日、河北新報

別居・離婚 引き離された親子(上)/失われた日々/写真の子、どこで何を

 夫婦の別居、離婚によって、ないがしろにされがちなのが子どもの立場だ。このため、民法766条が2年前に改正され、離婚した場合の面会交流や養育費などについて、子の利益を最優先にして決めなければならない、と明記された。ただ、現実には感情的な問題などから双方できちんとした話し合いができず、夫婦の別れが親子の別れにつながるケースも少なくない。子どもと引き離された親たちの苦悩や支援の動きを通じて、今後の課題を探った。(生活文化部・越中谷郁子)

<妻がDV被害届>
 机に並べた数枚の写真には、仲良さそうに遊ぶ幼いきょうだいが写っている。宮城県内に住む30代男性は毎朝、「今日も元気に過ごすんだよ」と写真に話し掛け、2人の一日の無事を祈ってから出社するのが、日課になった。
 昨年の初夏のことだった。男性が残業を終えて帰宅すると、寝ているはずの妻と子ども2人の姿はなかった。何かあったのか。不安にかられて最寄りの警察署に行くと、「奥さんからドメスティックバイオレンス(DV)の被害届が出ている」と言われた。
 夫婦げんかはあったが、DVは身に覚えがなかった。何日たっても何の連絡もない。食事も喉を通らず、眠れない状態の日々が続いた。約1カ月後、地方裁判所からDV保護命令が出された。「結婚当初からDVを受けていた。とにかく恐ろしい」という妻の主張が認められた。
 結婚して約15年。なかなか子どもに恵まれず、上の子はやっと授かった子だった。かわいくて仕方なくて、育児もできる限りのことはやったと思っている。下の子も生まれて、待ち望んでいた4人家族になった。
 ことしに入り、妻が離婚調停を申し立てた。男性は子どもとの面会交流を求める調停を申し立て、話し合いは継続中だ。

<伝えられぬ思い>
 突然いなくなった日から、子どもがどこで、どう暮らしているのか分からないまま。手元にある写真は、調停の場で妻の代理人に求めてようやく手に入れた。子どもは会えない間に随分大きくなっていた。
 自宅の中はそのままにしてある。「大好きだよ、パパといつでも会えるよと、抱きしめて伝えたい」。男性は涙を拭きながら訴えた。
 同じような悩みを持つ当事者は多い。4月下旬、当事者同士苦しい胸の内を語り合おうと、親子ネット東北支部が発足した。代表の笹裕子さん(57)は、祖母の立場で孫に会えない悲しみを背負う。長男が離婚し、ことし4歳になる孫がどうしているのか知るすべがないのがつらい。
 「おばあちゃんとして、孫に愛情をかけてやれないことが悲しい。苦しむ長男を見ているのもつらい。息子と同じ立場の人が笑顔で暮らせるようにしたい」。笹さんの願いだ。

◎増える面会交流調停

<メモ>子どもに会いたいと家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる人が、全国的に増えている。
 司法統計によると、家裁の新規受理件数は、2000年度の2406件から、12年度は9945件と約4倍になった。東北6県では2000年度178件だったのが、12年度は568件に増えた=グラフ=。
 離婚問題に詳しい仙台弁護士会の土井浩之弁護士は背景の一つとして「共働きが増え、夫が積極的に子育てに関わるようになったこと」を挙げる。「母親が親権を持つケースが多い中で、子どもと会いたいと願う父親が増えたのではないか」とみている。

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