寄稿SeasonⅩ ①
Season 10「クレイマー以後」考①
自宅の押し入れを整理していたら、古びたVHSのビデオテープが出てきました。「クレイマー、クレイマー」。1979年、全米の話題をさらった映画です。はるか昔の学生時代、どこかの中古ビデオ店で購入したと思われます。現在、親子断絶問題と向き合っているボクは、このビデオがほこりをかぶった状態で残っていたことに、何か不思議なものを感じざるを得ませんでした。
舞台は1977年のニューヨーク市マンハッタン。主人公はワークホリックの夫テッド(ダスティン・ホフマン)と美人の妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)、そしてかわいい盛りの5歳の一人息子ビリーだ。
夫はひたすら家族のために働く典型的なサラリーマン。
妻も、夫を、そして一人息子を心から愛している。だが、家事と育児のみに追われる日々の中で、何か自分が見失われていくようで、強い焦りを感じている。夫にも打ち明け、相談してみたが真剣に取り合ってくれない。
こうしたある夜、夫は部長昇進のビッグ・ニュースをかかえて、妻と喜びを共にしようと我が家に駆け込んだ。そこで彼が出会ったのは「さよなら、あなた!」とスーツケース片手に家を出ていこうとする妻の冷めた目だった。
テッドはジョアンナの家出後、慣れない家事・育児に追われる。出世階段から降ろされたが、新しい生きがいを感じさせた。テッドの生き方は変わった。
そして舞台は法廷へ。
激しい争いの後、「母性」を強調したジョアンナが勝訴し、親権と監護権が単独で与えられた。母親が迎えに来るという日に泣きじゃくるビリー。テッドは言い聞かせる。しかし、ジョアンナは意外にも「寛容」の提案をする。物語はハッピーエンドで幕となる。
アメリカ国民に多大な影響を与えたこの映画を下敷きに、心理相談員を務めていた棚瀬一代さんは1989年、『「クレイマー、クレイマー」以後~別れたあとの共同子育て』を出版します。
【気弱なジャーナリスト・Masa】
更新 2023-05-01 (月) 06:49:11
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