両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和3年5月7日、東京新聞

「親権」が問う親子、夫婦、家族、『子の権利保障 不十分』

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◆子の権利保障 不十分 早稲田大法学学術院教授・棚村政行さん

 日本の法律や政策は、子どもを権利の主体ではなく、大人の保護の対象として位置づけていると感じます。例えば、児童手当や児童扶養手当は子どもに直接支払われるのではなく、親に支給されます。親にお金を配れば子どもにも届くだろうという発想です。子ども自身が権利を持ち、独立した人格として尊重されるというよりも、大人を通して守られる存在、大人の付属品のように考えられているのではないでしょうか。
 日本も批准している「子どもの権利条約」では、子どもの主体的な権利性や独立した人格を持つことが強調され、これに沿って先進国は法律も見直してきました。しかし、日本には「子どもの権利基本法」のような包括的な法律がなく、子どもの権利の保障は不十分です。個別の分野を見ても、体罰を禁止する規定が十分でないとか、民法に親の懲戒権が残っているなどの課題があります。
 子どもを従属的にとらえる考え方は、親子の一体感とも関係しています。日本は文化的に親子の結び付きが強い国です。子どもを道連れにした無理心中などは海外では考えられないことです。親子の仲が良いことは悪いことではありませんが、健全な緊張関係は子どもの自立のためにも必要です。
 最近では、新型コロナウイルスの感染拡大が子どもに与える影響を心配しています。在宅勤務の増加や失業といった親のストレスが児童虐待という形で子どもに向かっています。オンラインで学習する機会が増え、家庭の経済格差がパソコンを持てるかどうかといった教育格差につながっています。
 日本は自己責任論が強く、貧困は家庭の問題とみられがちです。しかし、必要であれば、国や社会が介入して弱い立場にある子どもを守る姿勢を示すことも重要です。
 子どもにとって親の離婚は人生の一大事です。日本は、離婚後は父母の一方が親権を持つ単独親権ですが、父母の双方が親権を持つ共同親権の是非を巡る議論が法務省で始まりました。離婚後に父母が子どもを巡って綱引きをする場面が多く見られます。大人の主張だけが前面に出て、子どもの声がかき消されているのです。子どもにとって何が最善かということを中心に置きながら議論する必要があると考えています。 (聞き手・木谷孝洋)

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