両親の愛情が子どもの健全な成長に不可欠であるとの認識のもと、子どもの連れ去り別居、その後の引き離しによる親子の断絶を防止し、子の最善の利益が実現される法制度の構築を目指します

令和3年10月9日、SAKISIRU

DV支援と児相一時保護で、本当に子どもを守れるの?

牧野千佐子 ジャーナリスト

両親の離婚後、父親か母親のどちらか一方しか子どもの親権を持つことができない「単独親権」によって生ずるさまざまな課題についてこれまで取り上げてきた。それは、DV支援措置の運用や、児童相談所の一時保護制度にも関わってくることも述べてきた(「虐待はあったのか?児相の一時保護、司法の判断を」、「『実子誘拐』解決を阻む「でっちあげDV」の深層」)。これらの問題を詰め込んだ”見本ケース”に、愛知県在住の谷川康司さん(仮名)の事件がある。現在進行形の谷川さんのケースを紹介したい。

「虚偽DV」一審は妻と県に賠償命令

谷川さんの裁判は、DV支援措置の運用の欠陥を扱ったものとして知られる。谷川さん夫妻は、2006年に結婚し子どもが生まれたが、2012年に妻が子どもを連れて別居。谷川さん側の子どもとの面会交流の申し立てを受けた名古屋家裁半田支部は、妻に夫と子どもを面会や手紙のやり取りなど定期的に交流させるよう命じた。

妻は愛知県警に、「DV防止法」に基づいて谷川さんに住所などを知られないようにする支援を申請。対応した警察官は「妻はDV被害者で、今後もDVを受ける危険がある」との意見書を作成した。意見書に基づき、自治体が支援を開始(自治体職員は、谷川さんが子どもと面会交流できる旨の裁判所の審判を知っていた)。谷川さんは、妻の住所が記載された住民基本台帳の閲覧などができなくなり、子どもとの交流が絶たれてしまった。

谷川さんは「妻のDV主張は虚偽なのに、警察は調査をせず事実と認定した。名誉を毀損(きそん)された上、子どもと会えなくなった」として妻と県を提訴。名古屋地裁(福田千恵子裁判長、小林健留裁判官代読)は夫側の主張を認め、妻と県に計55万円の賠償を命じた。

二審は夫の逆転敗訴も、市への提訴は和解

この裁判では、妻側は「過去のDVや、今後もDVの危険があることは事実」、県側も「県警の認定に問題はなかった」などと反論していたが、福田裁判長は「妻側の主張するDVは診断書などがなく、誇張された可能性がある。妻は子どもと夫の交流を絶つ意図で支援を申請したと認められ、制度の目的外使用」と認定。県についても「妻からの支援申請の妥当性を一切調査しなかった」と過失を認定した。

また、「DV被害者の支援制度が、相手親と子どもの関係を絶つための手段として悪用される事例が問題化している。弊害の多い現行制度は改善されるべきだ」と踏み込んだ言及を行った。

ただ、名古屋高裁は2019年1月31日、一審が「過去のDVが事実か否かは判然としない」「(客観的に)暴力の危険性はなかった」としたのに対し、高裁は「(元妻の主観では)危険性を感じていた」と元妻の支援措置利用が「制度の目的外使用とは言い切れない」と認定。名古屋地裁の判決を取り消して、男性側敗訴の判決を言い渡した。また、判決では「警察に被害者の申告内容の真偽を調査する義務はない」、「支援措置を実施するか否かの最終判断者は市町村であるため、警察の責任は認められない」と認定した。

2019年3月、谷川さんは、半田市に対してこの支援措置の対応を巡り名古屋地裁で損害賠償請求を起こした。裁判所は、半田市に落ち度があることを指摘した上で、両者に和解勧告。昨年3月に和解が成立した。

市がDV支援措置で夫に陳謝

和解条項は、半田市が不適正な扱いを行ったことを認め、陳謝すること。また、支援措置の要件を満たさなかった状況で、谷川さんが加害者であるかのような誤った印象や憶測が発生・継続したことと、谷川さんがまだ未成年者の実子の情報に接することが困難になったことなどを重く受け止め、今後の支援措置のが適正に行われるように確認に努めることを確約する、というものだ。

この和解で、市側がDV支援措置の運用について陳謝し、今後適正に行う努力をすることを約束した意義は大きい。

谷川さんのケースにはさらに、児童相談所の一時保護の問題も絡んでおり、これとは別の裁判にて近日進捗があったようだが、諸事情により、まだ公にはできない。随時報告したい。

ただ、進む裁判をよそに、谷川さん親子が会えない時間、どこにいるのかも、お互いにわからない時間の悲しみ、苦痛、怒りの責任は、一体だれが負うのだろうか?本来、弱い立場の者を暴力から救済するはずの制度は、本当に機能しているのか?誰のための制度なのか?それをぶつける先がないまま、引き離される親子が今日も増え続け、取り残されたままになっている。共同親権を導入するだけで全てが解決するわけではもちろんないが、少なくとも現行制度の歪みはもはや放置できない段階ではないのか。

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